2015年度グローバル研修Ⅰレポート

2015年度 グローバル研修Ⅰレポート

ニューヨーク大学(米国)へ派遣(2015年3月~6月)

【研修先】
ニューヨーク大学 言語学科

【研修報告】
 私が研修を行ったニューヨーク大学の言語学科は、さまざまな国の学生が集まった「グローバル」な学科であった。滞在中、私は言語学科と哲学科の大学院生に向けたプログラミングセミナーに参加した。PBTSでプログラミング教育に関する研究を行っているのだが、初心者がどのような場面でつまづくのか、また、彼らがどのようなサポートを必要としているのかを学ぶことが、セミナーに参加した目的であった。学生と教員のやりとりの中から、私はPBTSの研究を進めるヒントをいくつも得た。たとえば、私は研修前からプログラムの実行ステップを表示するためのツールを実装しているのだが、このセミナーではステップを書き下すという作業が役に立った場面が何度もみられ、自分が実装しているツールのニーズを確認することができた。
 滞在期間の後半は、ニューヨーク周辺で開催された学会にいくつか参加した。そのうち、コネチカットで開かれたシンポジウムでは、PBTSで実装しているツールに関する発表を行った。15分の発表時間に対し、移動には5時間もかかったが、プログラミング言語の専門家の活発な議論を観察できたうえ、自分の実装に関するアドバイスも頂くことができた。
 今回の研修はさらに、時間の使い方を見直すきっかけにもなった。研修中、毎日研究室に通うという習慣が身に付いたおかげで、帰国後も研究のペースが上がったように思う。今から2回目の研修が楽しみだ。

叢 悠悠(理学専攻情報科学コース M2)
PBTS所属チーム:Education

グローバル研修

ニューヨーク大学研修

オックスフォード大学(英国)へ派遣(2015年4月~7月)

【研修先】
Mathematical Institute,University of Oxford,UK

【研修報告】
 Mathematical Instituteでは850人を超える学部生、350人以上もの修士課程と博士課程に在籍する学生、さらには私のようなacademic visitor studentと呼ばれる短期で在籍する学生が、様々な分野の数学を勉強したり研究したりしています。セミナーが毎日のように開かれるので、異なる分野の数学に触れる機会が沢山あります。午前11時と午後3時のお茶の時間には、研究者たちが談話室に集まって紅茶を飲みつつおしゃべりを楽しみます。
 私は微分幾何学の知識を用いて、貝殻の成長過程を表す数理モデルをつくりました。最も単純な貝の形をMathematicaで表すことから始め、最終的にはTuritellaという貝の形を得ました。今まで学んできた純粋数学の考え方が、生物の世界を記述する際にどのように活かされているのかを学ぶことができてとても楽しかったです。基本的なことから丁寧に説明してくださる陽気な先生のもとで、PBTSでの皮膚細胞のパターン形成についての研究を進める際に必要となる手法を習得することができ、本当に良かったです。
 オックスフォードは緑豊かな美しい街で、朗らかで優しい人が多く、のびのびとした毎日を送りました。日本での日常生活を離れて異文化の人々と交流をしたことで、様々なことを新しい視点から落ち着いて考えられるようになったと感じます。

榎吉奏子(理学専攻数学コース M2)
PBTS所属チーム:Synchronization

グローバル研修

担当教員と共に


シドニー工科大学(豪国)へ派遣(2015年6月~9月)

【研修先】
University of Technology, Sydney
Institute for Sustainable Futures

【研修報告】
 2015年6月から9月にかけて、3ヶ月間、オーストラリアのシドニー工科大学の二人の教授の元で研修をしてきました。今回のグローバル研修Iでは、家庭用水需要量を複数因子の過去のデータを用いて解析、予測するというプロジェクト研究を行ってきました。データ整理の手法、因子検討の方法、複数の因子を用いた解析手法について学び、また、オーストラリアの水事情についても大変興味深いことを多く教えて頂きました。現在、PBTSでは食品工場排水の処理システムの改良に向けてチーム3名で研究をしています。私のPBTSにおける研究内容は、今後世界のどこの地域で、私達のチームにて提案する処理システムの需要が高まっていくのか、ということを過去のデータから将来予測するというものです。今回のグローバル研修により学んだ解析手法等を、より精緻なデータ解析、将来の排水処理システムの需要予測に早速活かしながら、PBTS研究を現在進めています。
 今回の研修では、本専攻でご指導頂いている先生、リーディングセンターの方々、SCの先生方、PBTSチームメンバー、友達等、本当に多くの方に支えて頂き、3ヶ月という短い期間でありながら本当に多くのことを学び、貴重な経験をさせて頂きました。今は、PBTSだけでなく、今後のリーディングプログラムでの活動、研究にも活かしていきたいと考えています。

西田かおり(ライフサイエンス専攻人間・環境科学コースM2)
PBTS所属チーム:Water Purification

シドニー工科大学

シドニー工科大学


国立健康・栄養研究所(日本)へ派遣(2015年7月~9月)

【研修先】
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所
基礎栄養研究部 主要栄養素研究室 
主要栄養素の過剰もしくは過少摂取で生じる肥満や生活習慣病の発症機序とそれらの予防法に関する研究を行っています。
 
【研修報告】
 私はPBTS1において抗酸化作用の高い煎茶の開発を目的とした研究を行っており、PBTS2でマウスを用いてお茶の抗酸化作用の検討を行う可能性があったため、本インターンではマウスを用いた実験手法の技術習得を目的としました。インターンシップではマウスの扱い方、飼育方法、運動や栄養の負荷のかけ方、解剖等の基本的な扱い方を学び、また解剖以外にも、マウスを用いた実験の手法 (血液の採取、血清の調整、血清の分析、解剖と組織の採取、RNAの抽出、cDNAの作成、RT-PCRなど)の技術を習得しました。今回のインターンシップではPBTS1に直接的に関係のある実験を行うことはありませんでしたが、PBTS2や自分の将来に繋がる非常に貴重な経験をさせていただきました。PBTS2ではマウスにPBTS1で開発した煎茶を摂取させ、脂質代謝や長寿関連遺伝子の発現をRT-PCRで確認し、またマイクロアレイによる網羅的解析も検討したいと思っています。

田村りつ子(ライフサイエンス専攻生命科学領域 D1)
PBTS所属チーム:Anti-Aging

研修先:国立健康・栄養研究所

研修先:国立健康・栄養研究所

ピラポ福祉施設(パラグアイ共和国)へ派遣(2015年6月~9月)

【研修先】
ピラポ日本人会高齢者デイケアグループ「ひまわり会」
ピラポ市役所

【研修報告】
 PBTS1では抗酸化成分を多く含むお茶の研究をしているので、私は実際に、海外に住む日系人のお茶の喫飲状況と、健康長寿者の食事と健康のための実践活動について知るために、質問紙による調査活動を行いました。
 市役所での研修の目的は、行政の高齢者健康・福祉分野での取り組みについて学ぶことでした。実際には今年から調理、提供の始まった国立小学校の給食メニューの栄養計算を行いました。
 今回の研修を通して、高齢者の方々が身体機能や記憶低下に伴い、日常でどんなことに不自由しているかといったお話を直接聞くことができ、文献調査だけでは知ることのできない学びを得ることがきました。
 研修中にちょうど、ピラポ市は日本人入植55周年祭が行われ、高齢者やスタッフの方々から、入植当時の様子や、ジャングルを開拓された頃のご苦労話を聞くことができました。今では広大な大豆畑や小麦畑の広がる穀倉地帯となっていますが、寝る間も惜しんで働かれ、家族を守りつつ生活を築いてこられた日系人の方々のお話に涙が出るほど感動し、励まされました。     
 研修中いつも温かくご指導して下さった現地スタッフの皆様に心から感謝しています。
 最後に、こうして貴重な経験をさせていただいたリーディングプログラムの先生、スタッフの方々、指導教官のご理解に心から感謝しています。ありがとうございました。

カバリェロ優子(ライフサイエンス専攻食品栄養科学コース M3)
PBTS所属チーム:Anti-Aging

ピラポ

高齢者の健康調査

ピラポ

ピラポ日本人会ひまわり会

ピラポ

EXPO PIRAPO 2015

富士通株式会社(日本)へ派遣(2015年8月~11月)

【研修先】
富士通株式会社 公共・地域ビジネスグループ
ビジネスイノベーションセンター 教育イノベーショングループ

【研修報告】
 私は富士通株式会社 教育イノベーショングループ(ICTを活用した新規教育事業を企画する部署)において、3ヶ月間研修を行いました。PBTSで「プログラミングを通した論理的思考力の育成」をテーマにしているため、本研修では主にプログラミング教育プロジェクトに参加し、グループ員のお子様を対象としたプログラミング教育の実証を行いました。講義内容の検討からPCの環境構築、リハーサルまで、グループの皆様にご協力いただきながら準備を進め、11月に無事に教室を開催することができました。他にも、グループでは複数のプロジェクトが進行しており、基本情報調査や資料作成に参加しました。また、実社会における論理的思考力の必要性を調査するため、グループの皆様を対象に論理的思考力に関するアンケートを実施しました。調査によって、仕事のあらゆる場面で論理的思考力が求められることがわかり、私たちの研究の重要性を確認することができました。
 本研修では、企業における仕事の進め方、社会人としての心構え等、企業に身を置いたことで初めて知ること、学ぶことが多くありました。3ヶ月間という短い期間でしたが、本当に貴重な体験をさせていただきました。この経験を今後の主専攻と副専攻の両立、PBTSの推進に活かしていきたいと思います。

水戸 晶子(理学専攻化学・生物化学専攻 D1)
PBTS所属チーム:Education

プレゼンテーション

研究会発表

富士通株式会社

富士通株式会社
汐留シティセンター

ストラスブール大学(フランス)へ派遣(2015年9月~12月)

【研修先】
ストラスブール大学
Laboratory of Hydrology and Geochemistry

【研修報告】
 ストラスブール大学の地質化学研究室にて、ブドウ園に散布された農薬の環境影響に関する研究に参加させていただきました。この研究室では、週に一度車で1時間ほどかかるブドウ園を交替で訪れ、半日かけて土や水、植物等のサンプル採集やデータ収集を行っていました。本物の環境サンプルを使って本格的な実験を行うことは初めての経験で、社会問題に直結していることを実感できるやりがいや、実験室内だけでの研究にはなかった数々の難しさにも気付きました。また、同じ研究テーマを複数のメンバーで長期間協力して進めていたことから、1人では困難なスケールの調査が可能になる一方、手順や進捗に関する情報共有の大切さや、自分の作業がメンバー全員に関わるというプレッシャーも強く感じました。私はPBTSにおいて廃水の浄化に関する研究を行っているため、今回の研修で学んだ環境サンプルの取り扱いやチーム内の連携の仕方は、今後の活動に大いに役立てられると考えています。
 ストラスブールはドイツとの国境に位置し、歴史的背景も関係してフランス語はもちろんドイツ語も使われています。私はフランス語もドイツ語もほとんどわからなかったため最初は何をする時も緊張していましたが、複数の言語や各国からの留学生と接する機会に恵まれたおかげで、世界中の人々と関わりたいという気持ちがさらに強くなりました。

川口 奈奈美(理学専攻化学・生物化学コース M2)
PBTS所属チーム:Water Purification

ぶどうの畑にて

ブドウ園にて

ストラスブール大学

ストラスブール大学

ストラスブール大学(フランス)へ派遣(2015年9月~12月)

【研修先】
ストラスブール大学天然物研究室

【研修報告】
PBTSテーマ:抗老化作用がある茶製品の開発
研修テーマ:抗老化化粧品に熱代ランの潜在性の探究
 熱代ランは抗炎症、抗酸化作用分子を持っているので、高傷害性な状況で長く生きている。このため、ランはいろいろな天然物薬品に応用されている。近年、ランの化粧品は開発続いている。ストラスブール大学天然物研究室はフランスの化粧品会社Guerlainと、ランの抗老化化粧品を共同開発している。
 年齢につれて、末梢血管の収縮性が低下して、皮膚は老化になった。私はストラスブール大学天然物研究室でタイからいくつかの熱代ランのエステを作って、薬理研究室でこれらのエステは豚の冠状動脈に血管収縮性があることを検査した。液液抽出とカラムクロマトグラフィーで、ランのエステ中の各種化合物を分離して、血管収縮性がある化合物を探すつもりがある。
 私のPBTSチームはアンチエイジングで、下堂園お茶会社と抗老化作用がある茶製品を共同開発している。PBTS Iは緑茶の製作過程の蒸発時間を注目されて、HPLCで抗酸化と抗老化作用成分を分析する。PBTS IIはin vitroとin vivo実験で緑茶の抗老化作用を再検証するつもりである。ランの血管収縮性の検査方法は緑茶の抗老化作用の検証法:エステを抽出、成分分離、in vitroで抗老化作用の検証などの参考になる。

李 冬陽(ライフサイエンス専攻生命科学コースM2)
PBTS所属チーム:Anti-Aging

Faculté de Pharmacie

Faculté de Pharmacie

バージニア工科大学(アメリカ)へ派遣(2015年8月~12月)

【研修先】
Virginia Polytechnic Institute and State University

【研修報告】
 研修先のバージニア工科大学はブラックスバーグという町に位置しております。家に大学のロゴがあったり、銀行の前に大学のキャラクターが置いてあったりと町全体が大学を応援しているような雰囲気でした。
 研修先ではPBTSのテーマ、皮膚細胞とコラーゲンの研究に関連して、これらのモデルのシミュレーション、またモデルの修正を実施しました。さらに、実験結果と比較する測定量の取り出し方について議論、考案し、実際にシミュレーションの結果から抽出しました。
 皮膚細胞は細長い形をしていて互いの向きの相関を測ることができます。コラーゲン濃度を変えて実験をしたときこの相関がどう変わるかをみます。私の担当するモデル構築(修正)とそのシミュレーションは実験結果を再現し、さらにそこから実際に起きている現象を予言することが目的です。今回の研修で作成したシミュレーションプログラムを元にさらなる改良を目指しております。
 研修先では、受け入れ先のJohn J. Tyson教授を始め、竹内建准教授やセミナーでお会いした研究者、バージニア工科大所属の研究者と議論を行うことができました。議論から知識や方向性を得るだけでなく、深い知見にはっとさせられることも多く、勉強になりました。

山下 公子 (理学専攻物理科学領域 D1)
PBTS所属チーム:Synchronization

グローバル研修

大学や町にいるキャラクター

グローバル研修

Tyson教授と議論

島根大学(日本)へ派遣(2015年12月~2016年2月)

【研修先】
島根大学 総合科学研究支援センター 生体情報・RI実験部門

【研修報告】
 島根大学医学部附属病院の隣にある建物で、細胞外マトリックスタンパク質と遺伝性難病エーラス・ダンロス症候群の関係について研究を行いました。3ヶ月で研究を仕上げるという目標を掲げて始めた研修は、先生の手厚い指導、多くの方の協力のおかげで無事に達成できました。今回の研修では、PBTSで今後着目する可能性のある、皮膚の創傷治癒に関する研究手法や知識を得ることができました。この研修で学んだ、コラーゲンゲル収縮解析、Zymographyをはじめとする創傷治癒に関する実験手法を用いて、PBTSⅡの研究を発展させていきたいです。
 研修で最も驚いたのは、研修先の研究体制の良さです。電子顕微鏡など操作の難しい機器は、技官の方が管理しており、使い方を指導してくださいました。また、実験に携わる方が多くいらっしゃるため、研究で困ったことがあっても相談すれば解決できる環境がありました。私は、お茶大でしか研究をしたことがなかったため、外部の研究室での研究活動は自分の将来を考えるよい経験になりました。積極的に人と関わること、自分の考えを持つことの大切さを改めて実感した3ヶ月間でした。

橋本 恵 (ライフサイエンス専攻生命科学領域 D1)
PBTS所属チーム:Synchronization

島根大学

島根大学 医学部

島根大学

研究活動の様子