ご あ い さ つ 本文へジャンプ

 私はこれまで20年以上にわたり、主に大学病院で小児科の臨床医として勤務し、2004年に、アップリカ寄附講座の担当として本学に赴任してきました。大学病院時代は、小児神経学の基礎と臨床を専門としていましたが、同時に子どもの発達全体に強い関心があり、基礎・臨床医学の研究だけでなく、育児や国際医療教育など幅広い研究対象を持っています。


 すでに本学に6年間奉職していますが、寄附講座では主に現職保育者へのリカレント教育を活動の主軸においていたため、大学を本拠とした研究活動はしばらく休眠状態でした。

 2010年度に寄附講座が終了し、大学院所属となりました。そして、学部での講義や大学院生の指導が本務となり、2011年度から大学院学生の皆さんとともに研究活動を再開することになりました。


 私自身の小児科医としての研究は、子どもの脳内の脂質の生化学からスタートしました。動物の体内には糖質とタンパク質が結合した糖タンパクと呼ばれる物質があり、生体機能に重要な役割を果たしていますが、その糖タンパク質の多くはその合成過程でドリコールとよばれるアルコールの一種と結びつきます。このドリコールと呼ばれる物質が、アルツハイマー病の脳内に蓄積していることが知られていましたが、子どもの神経疾患や加齢によって脳内に蓄積されることなどの研究で博士号を取得しました。


 臨床ではてんかん、脳性まひ、精神遅滞などの子どもたちをたくさん診てきましたが、その過程で子どもの発達全般への関心を持つようになりました。

 現在も、小児科医としての活動を続けています。臨床的には注意欠陥多動性障害、自閉症、アスペルガー症候群などの発達障害の子どもの臨床と臨床研究が主になっています。

 また、小児科医として育児相談に長い間携わってきましたが、育児あるいは子育ての過程で親が経験するさまざまな困難(夜泣き、トイレトレーニング、母乳、睡眠)などへの科学的な対応法の解明も最近の研究課題の一つです。


 教室には、教育心理学を専門とし、発達障害児の保育実践研究を行っている長谷川講師と、発達心理学専攻で、保育場面における発達心理学の応用を研究している安治アソシエートフェローがおり、協力し合いながら、教育と研究を進めています。

 

201110

榊原 洋一

 SAKAKIHARA Labo.