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和田 夏海

2019年6月5日更新

外国人住民の医療に関する困難とニーズの対処行動に及ぼす影響

和田 夏海
修了年度 2018年度
修士論文題目 外国人住民の医療に関する困難とニーズの対処行動に及ぼす影響
要旨
(1000字以内)
2018年6月現在、日本国内の在留外国人数は過去最高を記録している。彼らは日本での生活において様々な困難を抱えていると思われるが、本研究では彼らの生活に密着しているであろう「医療」について取り上げた。従来の研究では、外国人は医療場面において言語や習慣の違い、日本の医療に関する情報の不足、医療関係者との関係構築などに困難を抱えており、日本国内で外国人が増加する中、医療場面における困難の解決は喫緊の課題であると考えられる。そこで、本研究では、外国人が多く居住する東海地方のとある市(A市)の外国人を対象に、医療場面で抱えている困難、医療に対するニーズ、医療場面で困難が生じた際にとる対処行動の関連を明らかにするため、4つの研究課題を設定し、質問紙を用いた調査を行った。

 研究課題1では、医療場面で抱えている困難を明らかにするために因子分析を行った結果、「使用言語の違いによる不自由さ」、「医療関係者の不親切な態度」、「医療従事者に対する不安」、「医療関係者の外国人への理解の不足」、「医療従事者との希薄な関係」の5因子が抽出された。

 研究課題2では、医療に対するニーズを明らかにするために因子分析を行った結果、「外国語での対応環境の充実」、「医療機関・医療関係者の外国人に対する配慮」、「日本の医療に関する情報の提供」、「医療関係者による伝達の工夫」の4因子が抽出された。

 研究課題3では、医療場面で困難が生じた際にとる対処行動を明らかにするために因子分析を行った結果、「公的機関への支援要請」、「家族・同国人への支援要請」、「身近な人々への支援要請」、「医療関係者への不満の表出」、「別の医療機関・医療関係者への相談」の5因子が抽出された。

 研究課題4では、上記の困難、ニーズ、対処行動と日本での居住期間、日本語学習期間との関連を検討するため、対処行動を基準変数、困難、ニーズ、居住期間、日本語学習期間を説明変数とした重回帰分析を行った。その結果、日本での居住期間が短く医療関係者の態度に不親切さを感じる外国人は公的機関に支援を要請していた。また、日本での居住期間が短く医療関係者との関係が希薄な外国人は家族や同国人に支援を要請していた。さらに、日本での居住期間が短く、医療関係者との使用言語の違いに不自由さを感じている外国人は友人や近所の人など身近な人々に支援を要請していた。以上のことから、日本での居住期間の短さが対処行動に大いに影響を及ぼしていることが示唆された。

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