お茶の水女子大学
日本文化研究の国際的情報伝達スキルの育成
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平成21年度 第7回公開講演会

講演者   ハルオ・シラネ 先生
   (米国・コロンビア大学教授)
テーマ   四季の文化―二次的自然と都市化
日 時    2010年1月13日(水)17:30~19:00
会 場    本学 本館306室
司 会    平野 由紀子 (本学教授)
講演要旨  九世紀の紀貫之以来、第二次世界大戦後、今日に至るまで、日本の文学研究者や 作家たちの多くが、日本文学ならびに文化の重要な特徴のひとつは四季と自然への注視であり、それは大方、日本の風土や地勢によってもたらされた、と論じてきた。しかし、自然への親近感や四季の重視は、 ほとんど貴族社会や貴族的ジャンル(特に和歌の伝統)が作り出したものであり、それは八世紀、まさに日本文化が「都市化」し、大陸の強い影響下にあった時期に起こった。 自然をその色や香り、動きから優雅で繊細なものとみなした和歌は都市的ジャンルであり、他の多くの関連する都市的(都中心の)ジャンル―絵、庭園、寝殿造り、(のちに 生け花、盆栽、茶の湯)―とともに、優雅な形で自然を再構築し、私が呼ぶところの「二次的自然」を産み出した。この「二次的自然」はまた、より大きな 「うつしの文化」の一部でもあり、外界の自然、遠く離れた土地、風景をたいて いは縮小版かミニチュア版で都市の真ん中や住居の中へと移植した。 批評家が論 じる自然との親密性といういわゆる日本的感性は、二次的自然がほぼすべての文化様式に浸透し、普及した結果出来上がったものなのである。また、こうした二 次的自然の重要な特徴のひとつに、新たな生命をもたらし、自然からの危険を防ぐ目的、すなわち、私が呼ぶところの「護符的性質」が含まれていることも指摘したい。
 日本文学の自然表象にみられるもう一つの主要な側面として、動植物や岩石の 霊魂を信ずるアニミズムがある。それは古代の『古事記』や『日本書紀』に顕著に現れているが、 平安時代には優雅で都市的な二次的自然がきわめて隆盛となり、影を潜める。しかし中世後期になると多くの新しいジャンル―特にお伽草子と能―において、かつてのアニミズムが社会的により多様化した状況のもと で再び姿を現し、貴族文化の花鳥風月と融合する。中世後期におけるこれら二種 類の自然表象の接点についても、今回の発表で触れたいと考えている。
 
17:30~19:00
公開講演会
[司会] 平野 由紀子 (本学)      [会場] 本学 本館306室













19:00~21:00
意見交換の会
 [会場] 本学 本館1階 生活科学部大会議室











(2010/01/22up)