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本講演は、「恋愛小説」というカテゴリーについての日米比較の観点から興味深いものとなった。アメリカにおいては、「恋愛小説」という語からまず連想されるのは、ハーレクインロマンスに代表される「ロマンス小説」であり、それは完全に一つのカテゴリーとして成立している。よって、「ロマンス小説」には典型的話形がカテゴリールールによって定められており、そのルールに沿って展開するものだけが「ロマンス小説」と呼ばれる。 一方、日本における「恋愛小説」は、その意味ではカテゴリーとは異なる概念である。SF小説や時代小説といったジャンル、あるいはカテゴリーを想起すれば、「恋愛小説」とはむしろテーマにかかわる語であることが明らかになる。よって、日本の「恋愛小説」は、米国の「ロマンス小説」とは異なって、情熱的な恋愛から結婚へ、という結末にいたるとは限らない、というよりもむしろ、そのような径庭をたどるものは稀である。とくに近年のそれでは、愛する者の死といった悲劇性が好まれており、あらためて、日本の「恋愛小説」におけるハッピーエンドとは何か、考えさせられる。 会場には、本学学生ならびに学外からの参加者も含め、多くの出席者を得、「恋愛小説」の概念をめぐって、興味深い質疑応答がなされた。 とくに、女性読者による受容の観点から、「恋愛小説」をめぐる日米比較が新しい女性文化研究への視点をひらくものとして期待される。 【文責・菅 聡子】 (2009/08/10up) ![]() |