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さる2月15日、本学比較日本学研究センターのプロジェクト「アジアにおける仏教および儒教思想にかんする比較日本学的研究」の一環として徐翔生先生による講演会が開催された。徐先生は、1989年に本学修士課程を高島元洋教授の指導のもと修了された。「近松における心中の思想」をテーマとした修士論文以来、一貫して日本人の死生観についてさまざまな角度から研究されており、中国語日本語での著作や論文も多数発表なさっている。 講演は、日本の思想・文化を代表するものの一つと考えられている武士道の形成に儒教がどのような影響を与えたのかを解明し、それを通じて、日本と中国の思想の特質を比較思想的に検討するものであった。徐先生は、武士道に与えた儒教の影響を具体的に明らかにしつつ、しかし、結論としては、日本人は儒教を取り入れて武士道を作ったが、それはもとの儒教とはかなり違ったものとなっていると指摘された。つまり、儒教に限らず、日本人は中国からさまざまな先進的思想・文化を取り入れるが、そこには選択や変容が伴っていたということである。 徐先生の講演は明快かつ充実したものであった。講演後行われた30分ほどの質疑では、まず、修士課程在学中の本学大学院生3人が、恩や日本的変容など講演内容について質問し、そのいずれについても丁寧なお答えをいただいた。その後、自由討論にうつった。討論の中では日本と中国の精神文化の差異や新渡戸稲造の『武士道』の評価などについても突っ込んだ議論が行われ、興味深いやり取りがなされた。 当日は、講演会について毎日新聞の催し物欄(2008年2月13日夕刊)で取りあげられたこともあり、多くの一般人の参加者をお迎えすることができた。また、倫理学専攻の学部生、大学院生、埼玉県から派遣されている「道徳教育」の長期研修生も多数参加した。教員としては、ロール・シュワルツ先生、三浦謙先生が参加された。 今回の講演会では、学生たちは、日頃接することのあまりない、外国人による日本思想研究に実際に触れることができ、また、質問等を通じて理解を深めることができた。センターのプロジェクトとしては、武士道における儒教の影響を検討することで、比較思想的探究をさらに深めることができたといえる。今後も、武士道をはじめとして、日本思想に関する比較思想的観点を取り入れた講演会を継続的に開催し、さらに、国際的学術交流と学生の国際教育、そして、一般人への日本思想研究の成果の伝達を推進していきたい。 【文責 頼住光子】
(2008/02/19up)
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