論文紹介


更新日: 2001/10/15

コミュニケーション、インターアクション中心の教室活動



1.コミュニケーション中心の日本語教育を考える

2.能動的な教室活動は学習動機を高めるか

3.異文化間教育の視点からの言語運用教育

4.インプットの効果を高める教室活動:日本語教育における実践

5.Distance Educationによるインターアクションのための日本語プログラム

6.日本語の母語話者と非母語話者のインターアクションにおける相互理解の構築

7.初中級日本語学習者のコミュニケーション能力についての一考察

8.外国人日本語教師のための日本語クラスについての試み

9.ビジターセッションにおけるロールプレイの効果

10.高専日本語特別講座におけるプロジェクワーク実施報告








1.コミュニケーション中心の日本語教育を考える
  著者: 高見澤 孟 (たかみざわ たけし)
  雑誌名: 日本語教育研究 第39号 (ページ 1-13)
  年: 2000 (6)
  発行所: 言語文化研究所
  要旨:
  
  コミュニケーションの能力を育成するのには、文法知識や文型操作の訓練をするだけでは
不十分であり、コミュニケーションの現場で必要とされるさまざまな能力を分析し、それらを育
成する適切な方策を講じなければならないという観念から、そのための練習の対象分野を整
理された。その中では、オーディオ・リンガル・アプローチを重視されていた訓練もあるが、コミ
ュニケーション実践能力を育成し、母語話者との相互理解を達成できるように学習者を訓練す
るコミュニカティブ言語訓練もある。
  練習法は、学習者の目標達成に役立ち、しかも学習者が喜んで参加するような「練習」であ
るが、それらを適切に選択できるためには、教師が多くの練習法について学び、十分な知識を
もち、さらにそれらを効果的に実施できるような教育能力を獲得しておくことが必要である。


2.能動的な教室活動は学習動機を高めるか
  著者: 三矢真由美
  雑誌名: 日本語教育 103号 (ページ 1-10)
  年: 1999、12
  発行所: 日本語教育学会
  要旨:
  
  本研究は能動的教室活動と受動的教室活動を各々10個学習者に提示し、それについて
「楽しさ」と「必要性」という2点から5段階で評価をしてもらった。その結果「楽しさ」という点では
学習者はactive な活動より高く評価する傾向が見られたが、「必要性」という点ではactive と
passive の評価の間に顕著な差は認められなかった。さらに「楽しさ」と「必要性」の評価の間に
は相関関係があることがわかった。つまり、どちらか一方の評価が高まれば、他方の評価も同
時に高まっていくことが観察された。


3.異文化間教育の視点からの言語運用教育
  著者: 正宗鈴香 (まさむね すずか)
  雑誌名: 筑波大学留学生センター、日本語教育論集, 第14号 (ページ 95-108)
  年: 1999
  発行所: 筑波留学生センター
  要旨:
  
  初級日本語学習者の学習目的が多様化している。その中でコミュニケーション能力を必要
とする学習者が増加しており、コミュニケーション能力を目的とした日本語教育にも焦点が当て
られてきている。コミュニケーション能力を養成するには、言語的知識を与えるだけではなく、
対象文化での適応面、言語運用面といった社会活動面も包括した総合的な学習が重要になっ
ていくると思われ、そのアプローチの一つとして異文化理解教育を応用することが考えられる。
本研究は異文化理解プログラムを取上げ、その目的の一つであり、「言語運用能力のための
支援」を中心に考察した。いくつかの言語表現を取り上げ、それらの意味的ニュアンス、コミュ
ニケーション上の効果やそれを使用する時の発想、それを支える心理のあり方などをディスカ
ッションを通して理解を推進し、言語学習の効率化を図った。


4.インプットの効果を高める教室活動:日本語教育における実践
  著者: 横山紀子
  雑誌名: 日本語国際センター紀要 第 9号 (ページ 37-51)
  年: 1999
  発行所: 国際交流基金日本語国際センター
  要旨:
  
 本論文は習得のプロセスの中で教育が関与できるのはどの部分かを踏まえ、教育が習得に
効果をもたらすいくつかの可能性の中からインプットのコントロールをとりあげて考察した。さら
に、インプットをめぐる研究成果を概観し、効果的なインプットの与え方として、特に言語形式
への注意を引くタスクや教室活動について考えた。言語学習は、中級までは日常生活の中に
強いニーズがあるので、比較的たやすく到着するが、中級を超えて伸びていくためには非日常
的な語彙や表現の習得が求められ、大きな難関となっている。Focus on formの流れは、高い
運用力に達するには、有意味なメッセージのやりとりを重視しつつも言語形式に焦点を当てた
学習が必要であることを伝えている。 


5.Distance Educationによるインターアクションのための日本語プログラム
  著者: ヘレン マリオット
  雑誌名: 世界の日本語教育(日本語教育事情報告編)1号 (ページ 203-215)
  年: 1994 (1号)
  発行所:国際交流基金日本語国際センター
  要旨:
  
 Distance EducationまたはDistance course , 教室内で教師を通じてではなく、ディスタンス用
に開発された教材を通じて行われるもので、教材は主に本・プリント類・オーディオまたはビデ
オテープに録音か録画されたものやコンピュータをとりいれたものもある。本研究はオーストラ
リアの日本語教育、とDistance Educationによる「インターアクションのための日本語コース」に
ついて観察した。
  インターアクションのための日本語コースに必要な要素、そしてその要素が教師や他の学
習者と接する場面が少ないDistance courseにいかに応用できるかを論じて、またそのようなコ
ースを開発することが、現時点では初級レベルにおいて可能であることを示した。
 

6.日本語の母語話者と非母語話者のインターアクションにおける相互理解の構築
  著者: 大平未央子
  雑誌名: 日本語教育105号 (ページ 71-79)
  年: 2000年
  発行所: 日本語教育学会
  要旨:
  
  本研究は母語話者と非母語話者インターアクションにおける相互理解の達成のプロセス
を、関連性理論の枠組みを用いて考察した。発話の処理にあたっては、個々人の認知環境か
ら生じる想定をもとにして、話し手の能力や優先事項に合致すると同時に、聞き手の処理労力
に見合うだけの認知効果が達成できる解釈、すなわち最適な関連性がある解釈を行うため
に、話し手である母語話者と聞き手である非母語話者双方が協働していることが明らかになっ
た。具体的には、個々の状況で利用可能なスキーマ、母語話者の調整、非母語話者のコミュ
ニケーション・ストラテジーをたくみに利用することによって、相互理解を達成させていた。


7.初中級日本語学習者のコミュニケーション能力についての一考察
  著者: 藤長かおる
  雑誌名: 日本語国際センター紀要  (ページ 51-69)
  年: 1996年
  発行所: 国際交流基金日本語国際センター
  要旨:
  
  日本語教育センター短期研修の日本語の授業では,初等中等教育に携わる教師を対象
に、日本語運用力の向上を目的として、トピック・シラバスによる4技能総合型の授業を行って
いた。このコースでは、話し言葉によるコミュニケーション重視の活動を行っていた。運用力が
限られている初中級の学習者が運用力の不足を補って、より高度な内容の会話を維持するた
めには、コミュニケーション・ストラテジーの使用が重要な鍵となっている。
  目的は、第一段階として、最終インタビューを発話標本とし、話し手の方策としてのコミュニ
ケーション・ストラテジーの使用を観察し分類・記述することである。例えば、
1.学習者は問題解決のためにどんなストラテジーを使用したか。
2.学習者によって、使用するコミュニケーションストラテジーに特徴があるか。また、この結果
  として、発話には構文的な特徴が見られるか。
3.授業で運用練習を行った言語形式は、どのように発話に反映されているか、について考察
した。


8.外国人日本語教師のための日本語クラスについての試み
  著者: 八田直美
  雑誌名: 日本語国際センター紀要 第5号 (ページ 55-68)
  年: 1995年
  発行所: 国際交流基金日本語国際センター
  要旨:

  日本語国際センターの外国人日本語教師の1993年度短期研修より5期にわたって行われ
た、日本語運用力の低い研究生のための話題シラバスによる日本語クラスの授業の試しを報
告し、また短期研修の日本語科目の問題点、話題シラバスとその教材・活動、また教師研修
の視点からの今後の展望についての報告である。
  話題シラバスで、日本文化についての知識や経験を増やしながら、日本語を学習する方法
は、研修生たちに受け入れられたと言える。外国人日本語教師の研修として考える時、研修
生自身の日本語力の向上は、特に日本語運用の低い研修生の場合、最も大きな目標であ
る。


9.ビジターセッションにおけるロールプレイの効果
  著者: 高崎三千代・古川嘉子
  雑誌名: 日本語国際センター紀要 第10号 (ページ 33-49)
  年: 1998年
  発行所: 国際交流基金日本語国際センター
  要旨:

  国際交流基金日本語国際センター1998年度海外日本語教師長期研修の授業では、活動
の一つとして日本人参加者を迎えたビジターセッションを行った。まず、ロールペレイのフィード
バックでの研修生・日本人双方の意見を検討し、されに、会話を参加者同士の相互行為と考
える会話分析の立場から、研修生と日本人がその場面でどのように協同して、会話を維持して
いくかを比較考察した。この分析によって、談話バターンなどの会話の定式を提示しなくても、
研修生が会話の進め方のルールに測りながら、会話を展開させ得ることが確認できた。分析
結果から明らかになった、研修生が日本人との会話で用いた展開の方略は、今後中上級段
階の口頭表現能力指導における課題設定の上で重要と考えられる。


10.高専日本語特別講座におけるプロジェクワーク実施報告
  著者: 新井理恵、小森和子、奥原淳子、矢崎理恵
  雑誌名: 日本語教育研究 号20
  年: 1997年
  発行所: 国際学友会 
  要旨:
  
  国際学友会では、高専日本語特別講座の学生に対して補講授業を実施した。学生の学習
意欲を高めることを勘案し、「自分の国のことを日本語で日本人に伝えられるようになろう」を
テーマとしたプロジェクトワークを実施した。本稿では、その活動の詳細報告とともに、学習者
主体の学習活動における留意点について考察した。
  結果は学習意欲を高めることはできたが、その課題の中で、最も考慮すべき点は、学生の
活動への取り組み方であると思われる。





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