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概要報告 | ![]() |
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1999年中国・寧波の天一閣博物館で発見されたことが公表された天
聖令(宋令)の写本には今まで知られていなかった唐令が多数含まれていました。唐令は散逸してしまっており、このようにまとまった形でみつかったのは初め
てです。この写本は中国史研究者のみならず、日本古代史研究者からも注目を集めていましたが、漸く今年11月中国において、『天一閣蔵明鈔本天聖令考證
附唐令復原研究』上・下(中華書局)として刊行されました。本イニシアティブにおいては、この本を編集した中国社会科学院歴史研究所教授黄正建先生をお招
きし、大学院生に特別講義をしていただき、また、天聖令に関する学術講演会を開催しました。 |
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(1)
大学院特別講義「天聖令講読」 2006年12月6日(水)10:40〜12:10 於文教育学部1号館1階第1演習室 2006年12月8日(金)13:20〜16:30 於 同上 日本古代史ゼミの大学院生を中心に、中国史の学生もまじえて、「天聖令」のうち、倉庫令、厩牧令、雑令を講読しました。従来唐令を復原したものとして使用 されてきた『唐令拾遺』『唐令拾遺補』との比較、また唐令を手本として編纂された日本令(養老令)との比較対照も行いました。従来知られていた唐令の倉庫 令逸文が10条であるのに対して、今回発見された天聖令のうち宋令は24条、不行唐令は22条もあり、日本令(養老令)は22条です。日唐の違いも興味深 い点です。黄先生からは唐令復原研究について貴重なご指摘をいろいろいただくことができました。天聖令については今後の詳細な研究が待たれます。
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(2)
講演会 「天一閣蔵《天聖令》整理研究
曁唐日令文比較断想」 2006年12月8日(金)17:30〜19:30 於文教育学部1号館1階第一会議室 羽入佐和子副学長のご挨拶の後、黄先生ご自身が用意してくださった「與《天聖令》相関的研究文章」と「唐日令条文比較挙例」のレジュメが配布され、講演会 が行われました。通訳は本学博士課程で学位を取得し現在は早稲田大学などで教鞭を取っている張娜麗さんにお願いしました。 講演内容は、「『天聖令』の発見」から「『天聖令』の概況とその価値」「『天聖令』の整理と研究の状況」「中国社会科学院歴史研究所『天聖令』整理チーム の仕事」、最後は「唐日令の比較」にまでおよぶ充実したお話をうかがうことができました。 天聖令については、11月28日(火)の朝日新聞朝刊でも取り上げられ、注目していた方々が多かったこともあり、講演会参加者は、本学の羽入佐和子先生、 窪添慶文先生、森山新先生、伊藤美重子先生、吉村佳子先生、宮内貴久先生をはじめ、大学院生、学生、また他大学の中国古代史・日本古代史の先生方、大学院 生など80名という多数におよび、第一会議室が満員状態になりました。中には、遠く関西や新潟県から来てくださった方々もおられました。 黄先生のお話しにみな熱心に聞き入り、時間を延長して質疑応答が行われました。黄先生は日本語がお上手なので質疑応答は専ら日本語を使って行われました。 最新の情報に接することができ、学術的に大変価値の高い講演会となったと言えましょう。中国古代史と日本古代史の研究者・大学院生が一同に会することがで きたこともよかった点としてあげることができます。このような唐令・日本令に関する研究は、今後、中国と日本双方における中国史・日本史の研究者・大学院 生が共同で行う必要があることが痛感された機会ともなりました。
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(文責
古瀬奈津子) |
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