氏名 |
吉田 綾 |
修了年度 |
2014年度(2015年1月提出) |
修士論文題目 |
フォーカス・オン・フォームは JSLの子どもの日本語習得を促進するか ―助数詞に関する縦断的な指導効果の検証― |
要旨(500字以内) |
本研究は、日本語が母語でない(JSL: Japanese as a Second Language)子どもを対象にフォーカス・オン・フォーム(FonF: Focus on Form)を長期的に実施し、その効果を検証した。FonFは、意味重視の活動の中で学習者の注意を言語形式に向け、その習得を促す指導法である(Long & Robinson 1998)。 結果、FonFはJSLの子どもの助数詞習得に効果があることが分かった。その効果は具体的には@「ひとつ、ふたつ…」「いっこ、にこ…」を人間・生き物に用いる誤用の正用化、Aどの名詞にどの助数詞を用いるかにおける混乱の解消であり、FonFが助数詞のルールの習得に効果を持ったことが明らかになった。その背景には、@FonFと明示的インストラクションにより、対象者に助数詞のルールに関する「気づき」が起きたこと、またAFonFが対象者に助数詞使用の練習の機会を与えたというFonFの役割が見られた。一方で一部の対象者は、「助数詞の音の変化の習得」という語彙の形式の習得や、コンテクストの中で助数詞を使用するまでの習得が促進されなかった。 本研究により@JSLの子ども対象に他の項目を対象としたFonF指導の更なる可能性が示され、その際にはA文法的な対象項目の選定と、B明示的インストラクションの実施が勧められるという点が示唆された。 |
要旨(1000字以内) |
近年、日本では日本語が母語でない(JSL: Japanese as a Second Language)の子どもが増加している。しかし現在の彼らに対する日本語指導では、具体的な指導法が確立されていない。本研究ではこの指導法として、カナダのイマージョン教育で効果が実証されている指導法、フォーカス・オン・フォーム(以下、FonF: Focus on Form)の効果を検証することを目的とした。フォーカス・オン・フォームは、意味重視の活動の中で学習者の注意を対象の言語形式に向け、その習得を促すという指導法である(Long & Robinson 1998:23)。 本研究では、研究課題1「FonFはJSLの子どもの助数詞習得に効果を持つか」と、研究課題2「FonFはJSLの子どもの助数詞習得にどのような効果を持つか」を設定した。そしてJSLの子ども6名を対象に、対象項目を助数詞に設定して、FonFの指導を実施しながらタスクを3回行い、事前・事後テストを実施した。 課題1は、事前・事後テストを比較し検証した結果、FonFは対象者の助数詞習得に効果を持ったことが実証された。課題2では、対象者の事前・事後テストの回答の具体的な変化を見た。その効果は具体的には@「ひとつ、ふたつ…」「いっこ、にこ…」を人間・生き物に用いる誤用の正用化、Aどの名詞にどの助数詞を用いるかにおける混乱の解消であり、FonFが助数詞のルールの習得に効果を持ったことが明らかになった。また一部の対象者の回答の変化から、明示的インストラクションが助数詞の習得に効果を持ったことが明らかとなった。また対象者の回答の変化やタスク中の会話を分析した結果、FonFと明示的インストラクションが、@対象者にどの名詞にどの助数詞を用いるかという「気づき」Schmidt(1993)をもたらしたこと、A対象者に助数詞を使用する練習の機会を与えたことが明らかになった。 一方で、一部の対象者では、コンテクストの中で助数詞を使用するまでの習得や、「いっぴき、にひき、さんびき」等の習得が進まなかった。助数詞の音の変化の習得は、本研究では語彙の習得の性質が強かったため、FonFが語彙の形式習得に効果を持ちにくいこと、またFonFでは細かい言語形式に対象者の注意を向けることが難しいことが示唆された。 以上から、本研究によって@JSLの子ども対象に他の項目を対象としたFonF指導の更なる可能性が示され、その際にはA文法的な対象項目の選定をすること、B明示的インストラクションの実施が勧められるという3点が示唆された。 |
最終更新日 2015年3月24日 |