氏名 

李 美賢

修了年度

2014年度(2015年1月提出)

修士論文題目

韓国における韓国人保育士が持つ「多文化家庭」に対するイメージと共感性および異文化接触体験との関連

要旨

(600字以内)

 本研究では、韓国における韓国人保育士が持つ「多文化家庭」に対するイメージと、共感性および異文化接触体験との関連を明らかにするため、多文化家庭の子どもを指導した経験のある保育士103名に質問紙調査を行い、統計的分析を行った。  因子分析の結果、共感性は、『共感的関心』『個人的当惑』『仮想的共感』の3因子、「多文化家庭母親」に対するイメージは、『愛護性』『社会適応性』『外向性』『社会的安定性』の4因子、「多文化家庭父親」に対するイメージは、『外向性』『社会的安定性』『親和性』『家庭重視』の4因子、「異文化接触体1」は、『対等な関係』『親密かつ協働関係』『制度的支援』の3因子、「異文化接触体験2」は、『メディア接触』『消極的接触』の2因子が抽出された。さらに、重回帰分析の結果、多文化家庭母親に対するイメージ『愛護性』には『親密かつ協働関係』、『社会適応性』には『対等な関係』『メディア接触』、『外向性』には『対等な関係』、『外国人との接触』が有意な影響を及ぼしていることが示された。多文化家庭父親に対するイメージ『外向性』には『外国人との接触』、『親和性』には『親密かつ協働関係』、『家庭重視』には『親密かつ協働関係』が有意な影響を及ぼしていることが示された。  以上から、保育園における偏見低減には、メディア接触を含む異文化接触体験が重要であることが示唆された。

要旨

(1000字以内)

 本研究では、韓国における韓国人保育士が持つ「多文化家庭」に対するイメージを探り、保育士の共感性および異文化接触体験や属性がイメージに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。多文化家庭の子どもを指導した経験のある保育士103名に質問紙調査を行い、統計的分析を行った。  研究課題1では、保育士の共感性について因子分析した結果、『共感的関心』『個人的当惑』『仮想的共感』の3因子から抽出された。  研究課題2では、保育士が持つ「多文化家庭」に対するイメージについて因子分析した結果、「多文化家庭母親」に対するイメージは、『愛護性』『社会適応性』『外向性』『社会的安定性』の4因子が、「多文化家庭父親」に対するイメージは『外向性』『社会的安定性』『親和性』『家庭重視』の4因子が抽出された。  研究課題3のAllport(1954)の接触仮説4条件に基づいた「異文化接触体1」は『対等な関係』『親密かつ協働関係』『制度的支援』の3因子、「異文化接触体験2」は『メディア接触』『消極的接触』の2因子が抽出された。  研究課題4では、「多文化家庭に対するイメージ」と保育士の共感性、異文化接触体験、属性との関連をステップワイズ法による重回帰分析から検討した。その結果、「多文化家庭母親」に対するイメージ『愛護性』には『親密かつ協働関係』であることが有意な影響を与え、『社会適応性』には『対等な関係』であり、『メディア接触』があることが有意な影響を与え、『外向性』には『対等な関係』であり、日常生活における『外国人との接触』があることが有意な影響を及ぼしていることが示された。「多文化家庭父親」に対するイメージ『外向性』には日常生活における『外国人との接触』があることが有意な影響を与え、『親和性』には『親密かつ協働関係』があることが有意な影響を与え、『家庭重視』には『親密かつ協働関係』であることが有意な影響を及ぼしていることが示された。 以上から、韓国人保育士が持つ「多文化家庭」に対するイメージが明らかとなり、特にメディア接触を含む異文化接触体験が影響していることがわかった。そのことから、保育士育成過程や現役保育士の再教育研修などにおいて、多文化家庭と実際の交流ができるような環境を作っていく必要が示唆された。

最終更新日 2015年3月24日