氏名 

王テイテイ

修了年度

2014年度(2015年1月提出)

修士論文題目

日中接触場面の初対面会話における相づちの考察 ―相づちの出現位置の視点から―

要旨

(600字以内)

 本研究では、出現位置という視点から、日本語母語話者(以下JSとする)と中国人日本語上級学習者(以下CLとする)の相づちの使用実態を明らかにすることを目的とし、JSとCLによる接触場面の二者間初対面会話のデータをもとに分析した。分析する際、まず相づちの会話全体における使用を確認するため、研究課題1では頻度・種類・機能の面から相づちの全体使用を分析した。その結果、JSはCLより頻繁に相づちを打っているが、全体種類について大きな差が見られなかった。しかし、全体使用の機能について、「情報の了解」、「同意の表示」及び「感情の表出」についてJSとCLにおける差異が見られた。次に、相づちの出現位置における特徴を探るために、研究課題2で各出現位置に見られる相づちの使用を頻度・種類・機能の面から分析した。その結果、CLは「同意の表示」を表す相づちの使用率がどの場面においても比較的に高いのに対し、JSは位置により機能の異なる相づちを使用することで相違が見られた。本研究の結果から、今後の中国人学習者に対する教室指導で、相づちの異なる位置における機能についての紹介を導入する必要性が明らかになり、日本語教育に示唆を与えうると言えるのではないかと考えている。

要旨

(1000字以内)

 本研究では、出現位置という視点から、日本語母語話者(以下JSとする)と中国人日本語学習者(以下CLとする)の相づちの使用実態を明らかにすることを目的とし、JSとCLによる接触場面の二者間初対面会話13組のデータをもとに分析した。分析する際、まず相づちの会話全体における使用全体使用を確認するため、研究課題1では頻度・種類・機能の面から相づちの全体使用を分析した。次に、全体使用の分析だけで見られない出現位置における相づちの特徴を探るために、研究課題2で各出現位置に見られる相づちの使用を頻度・種類・機能の面から分析した。 その結果、相づち頻度について、JSはCLより頻繁に相づちを打つが、頷きの頻度における差は言語的相づちにおける差ほど大きくなく、CLは言語的相づちより頷きを頻繁に用いる姿勢が窺えた。また、全体使用の種類についてJSとCLに大きな差は見られなかったが、「感声的表現」と「概念的表現」の下位分類に違いが見られた。さらに、全体使用の機能について、「情報の了解」、「同意の表示」及び「感情の表出」についてJSとCLにおける差異が見られた。 続いて、研究課題2の分析を通して、従来の「聞き手から送られてきた位置」以外の位置に、相づちが出現していることが確認された。相づちの出現位置別の分析を通して、JSとCLは頻度と種類について大きな相違が見られなかった。しかし、出現位置別の使用は全体使用と同様に、機能に関する相違点が見られた。「位置@α」以外に、CLはどの位置においても「同意の表示」機能の相づちを多く使用する傾向が見られたが、JSは、位置ごとに異なる機能の相づちを使い分けている姿勢が見られた。話し手の話を聞き終えて理解できた時点では、JSとCLは共に「情報の了解」機能の相づちを多用するが、JSはCLより有意に多かった。次に、相づちでターンを取る場合において、JSは「同意の表示」、「感情の表出」と「情報の了解」機能の相づちを三つ共に多く使用するが、CLが依然として「同意の表示」機能の相づちにおける使用率が比較的に高かった。さらに、相づちに相づちが続いている場合、CLが「同意の表示」機能の相づちにおける高い使用率に対し、JSは「同意の表示」、「情報の了解」、「感情の表出」及び「間を持たせる」という四つの機能の相づちの使用が見られ、使用率がいずれもCLより有意に高かった。 本研究の結果から、今後の中国人学習者に対する教室指導で、相づちの異なる位置における機能についての紹介を導入する必要性が明らかになり、日本語教育に示唆を与えうると言えるのではないか。

最終更新日 2015年3月24日