氏名 |
松川 彩 |
修了年度 |
2014年度(2015年1月提出) |
修士論文題目 |
非漢字圏出身生徒の未知漢字語の意味推測と指導の効果についての検証 ―来日間もない高校留学生を対象としたケーススタディ― |
要旨(600字以内) |
本研究では、非漢字圏出身の来日間もない高校留学生を対象に、未知漢字語の意味推測のための指導を行い、推測の正確さ及び手がかりの使用に変化が見られるかについて検討を行った。 調査の結果、以下のようなことが明らかになった。第一に、事前テストで30%だった正答率が事後テストでは70%となっており指導の効果が認められた。しかし、事前・事後テストで共に不正解だった語もあり、そのような語は推測させるのではなく、母語や媒介語等を用いるなどして明示的に意味を示す必要があると言える。第二に、推測の指導によって、推測に使用される手がかりに量と質の両側面からの変化が見られた。質的変化は主に漢字手がかりに見られ、それ以外の手がかりには量的変化が見られた。指導を重ねるにつれて徐々にターゲット語の周辺にある手がかりにも目を向け、様々な手がかりを組み合わせて推測する様子が観察された。このような使用手がかりの変化が推測の成功率を上げることにつながったものと考えられる。第三に、先行研究と同様に様々な手がかりを組み合わせて使用する統合手がかりに有効性が見られたが、使用する手がかりの量が必ずしも推測の質につながるわけではなかった。その他に、「発表」のように音を聞いたら分かるような語で、ネイティブの高校生に対しては当然漢字で書かれているような語であっても、対象生徒にとっては漢字からの推測が困難で、ルビなど音韻情報の表記が必要な語があることが明らかになった。 |
要旨(1000字以内) |
本研究では、非漢字圏出身の来日間もない高校留学生を対象に、未知漢字語の意味推測のための指導を行い、推測の正確さ及び手がかりの使用に変化が見られるかについて検討を行った。日本語の漢字語を対象とした研究はいくつかあるが、ほとんどが中級以上の成人学習者を対象とした研究であり、日本国内の日本語を第二言語とする児童生徒を対象とした研究はなされていない。成人対象の研究からは、未知語意推測指導に一定の効果が見られること、漢字手がかりや文脈手がかりなど複数の手がかりを組み合わせると推測の正確さが増すことが明らかにされてきた。 これに基づき本研究では、第一に、来日間もない非漢字圏出身生徒がどの程度正確に未知語意推測ができるか、第二に、対象生徒はどのような推測手がかりを使うのか、第三に、推測の正確さと使用された推測手がかりの間に関連は見られるか、の大きく3つの研究課題を設定した。またそれらについて指導が効果をもつのか検討した。調査は、事前テストを行った後、推測指導を5回、最後に事後テストを行うという手順で行った。課題は1~2文の中に下線のひかれた対象語が1語あり、その語の意味を推測してもらうものであった。 調査の結果、以下のようなことが明らかになった。第一に、事前テストで30%だった正答率が事後テストでは70%となっており推測指導の効果が認められた。しかし、事前・事後テストで共に不正解だった語もあり、そのような語は推測させるのではなく、母語や媒介語等を用いるなどして明示的に意味を示す必要があると言える。第二に、推測の指導によって、推測に使用される手がかりに量と質の両側面からの変化が見られた。質的変化は主に漢字手がかりに見られ、それ以外の手がかりには量的変化が見られた。指導を重ねるにつれて徐々にターゲット語の周辺にある手がかりにも目を向け、様々な手がかりを組み合わせて推測する様子が観察された。このような使用手がかりの変化が推測の成功率を上げることにつながったものと考えられる。第三に、先行研究と同様に様々な手がかりを組み合わせて使用する統合手がかりに有効性が見られたが、使用する手がかりの量が必ずしも推測の質につながるわけではなかった。その他に、「発表」のように音を聞いたら分かるような語で、ネイティブの高校生に対しては当然漢字で書かれているような語であっても、対象生徒にとっては漢字からの推測が困難で、ルビなど音韻情報の表記が必要な語があることが明らかになった。 |
最終更新日 2015年3月24日 |