氏名 

平井 えり

修了年度

2014年度(2015年1月提出)

修士論文題目

日韓国際結婚夫婦の葛藤場面における 解決方略と原因帰属および結婚満足度の関連

要旨

(600字以内)

 日本人の異文化接触に、国際結婚といった家庭における接触機会が散見されるようになってから久しい。本研究では日本在住の夫・日本人、妻・韓国人という組合せの日韓国際結婚夫婦を対象に3つの葛藤場面シナリオを含んだ質問紙調査を行い、男性53名と女性85名から回答を得た。夫婦葛藤場面における解決方略(対決、協調、服従、回避)と原因帰属(配偶者、自己、文化)について男性/女性、結婚満足度高群女性/結婚満足度低群女性に分けt 検定を行った。解決方略のt検定では、男性の<回避>女性の<対決>結婚満足度低群女性の<対決><回避>が有意に高かった。原因帰属のt検定は数項目で差があった。さらに結婚満足度、子の数、結婚年数、夫の年齢及び原因帰属は解決方略と関連があるか相関分析と重回帰分析を行った。相関分析の結果低い相関があった。重回帰分析の結果、解決方略<対決>には場面Uの満足度(負)、子の数、夫の年齢、原因帰属<配偶者>、場面Vの原因帰属<自己>解決方略<対決>が、解決方略<協調>には場面Tの満足度、原因帰属<配偶者>、場面Vの原因帰属<配偶者(負)><自己><文化>が、解決方略<回避>には場面Uの満足度(負) 、子の数、夫の年齢、原因帰属<文化(負)>が有意に影響していた。場面毎に原因帰属などの解決方略への影響が異なること、韓国人女性はマイノリティとして一方的に同化するのではなく、韓国の文化・習慣や自分の価値観を大事にしつつ方略を選択する様子が示唆された。

要旨

(1000字以内)

 日本人の異文化接触に、国際結婚といった家庭における接触機会が散見されるようになってから久しいが、国際結婚夫婦や外国籍配偶者の支援は家庭任せになりがちで、問題があっても外部からは分かりにくいのが現状である。しかし、国際結婚夫婦は価値観や文化の違いから葛藤を抱えていることが想定され、葛藤問題として注目し現状を把握する必要があるだろう。そこで、本研究では日本在住の夫・日本国籍、妻・韓国国籍という3番目に多い組合せの国際結婚夫婦を対象とし、3つの夫婦間葛藤場面における解決方略と原因帰属および結婚満足度の関連について検討し葛藤の現状を明らかにすることを目的とした。加賀美・大渕(2004)を参考に、解決方略は<対決><協調><服従><回避>の4つを、原因帰属は<配偶者><自己><文化>の3つを設定し、シナリオごとに、解決方略と原因帰属について5件法で評価してもらう質問紙調査を実施した。 男性53名と女性85名から得た回答を統計的に分析した。原因帰属と解決方略については男性/女性、結婚満足度低群女性/結婚満足度高群女性に分けてt 検定を行った。原因帰属のt検定では、シナリオTの男性×自己要因、シナリオTの結婚満足度低群女性×配偶者要因、シナリオTの結婚満足度低群女性×文化要因、シナリオVの女性×配偶者要因が有意に高かった。解決方略のt検定では、シナリオTからVを通して男性は<回避>、女性は<対決>、結婚満足度低群女性は<対決><回避>が有意に高かった。さらに結婚満足度、子の数、結婚年数、夫の年齢及び原因帰属が解決方略と関連があるか検討するために相関分析と重回帰分析を行った。相関分析の結果、低い相関が見られた。重回帰分析の結果、解決方略<対決>には場面Uの満足度(負)、子の数、夫の年齢、原因帰属<配偶者>、場面Vの原因帰属<自己>解決方略<対決>が、解決方略<協調>には場面Tの満足度、原因帰属<配偶者>、場面Vの原因帰属<配偶者(負)><自己><文化>が、解決方略<回避>には場面Uの満足度(負) 、子の数、夫の年齢、原因帰属<文化(負)>が有意に影響していた。場面毎に原因帰属などの影響の仕方が異なることが分かった。 以上の結果から、日韓国際結婚夫婦の葛藤場面における解決方略と原因帰属、結婚満足度及び属性(子の数、夫の年齢)との関連が明らかになった。日本国籍男性と婚姻関係にある韓国国籍女性は夫婦間葛藤が生じた際にマイノリティとして一方的に同化するのではなく、韓国の文化・習慣や自分の意志・価値観を大事にしつつ方略を選択する様子が見られた。

最終更新日 2015年3月24日