氏名 

薛 テイテイ

修了年度

2013年度(2014年1月提出)

修士論文題目

中国大学生の自立と母親の養育態度、期待との関連

要旨

(500字以内)

 近年、中国では自立をめぐる若者の問題が社会の注目を集めている。自立問題が起きる原因として、一人っ子政策、学歴社会など中国特有の文化や社会背景による家庭内の親の養育態度や、親の子どもに対する期待が考えられる。そこで、本研究では、中国大学生の自立の実態と、彼らの認識している母親の養育態度、期待との関連を検討することを目的とし、中国上海市内の大学に通う中国大学生(学部生)186名を対象に質問紙調査を実施し、統計的分析を行った。

 その結果、自立の『協調的対人関係』因子には母親の養育態度の『受容』が正の影響、養育態度の『過保護・干渉』が負の影響を、自立の『生活の自己管理』因子には養育態度の『過保護・干渉』が負の影響、母親の期待の『将来の安定性への期待』が正の影響を、自立の『主体的自己』因子には養育態度の『放任』が負の影響を、自立の『経済的自活』因子には属性の「アルバイト歴」が正の影響を、自立の『社会的関心』因子には属性の「学年」が正の影響を、自立の『社会参加』因子には属性の「年齢」が負の影響、養育態度の『自立促進』が正の影響を及ぼしていることが示された。

要旨

(1000字以内)

 近年、中国では自立をめぐる若者の問題が社会の注目を集めている。自立問題が起きる原因として、一人っ子政策、学歴社会など中国特有の文化や社会背景による家庭内の親の養育態度や、親の子どもに対する期待が考えられる。そこで、本研究では、中国大学生の自立の実態と、彼らの認識している母親の養育態度、期待との関連を検討することを目的とし、中国上海市内の大学に通う中国大学生(学部生)186名を対象に質問紙調査を実施し、統計的分析を行った。
 研究課題1では、中国大学生の自立として、『協調的対人関係』、『生活の自己管理』、『主体的自己』、『経済的自活』、『社会的関心』、『社会参加』という6因子が得られた。研究課題2では、中国大学生が認識している母親の養育態度として、『受容』、『過保護・干渉』、『放任』、『自立促進』という4因子が得られた。研究課題3では、中国大学生が認識している母親の期待として、『学業への期待』、『将来の安定性への期待』という2因子が得られた。研究課題4では、大学生の自立に影響を及ぼす要因を検討するために重回帰分析を行った結果、『協調的対人関係』には養育態度の『受容』が正の影響、養育態度の『過保護・干渉』が負の影響を、『生活の自己管理』には養育態度の『過保護・干渉』が負の影響、期待の『将来の安定性への期待』が正の影響を、『主体的自己』には養育態度の『放任』が負の影響を、『経済的自活』には属性の「アルバイト歴」が正の影響を、『社会的関心』には属性の「学年」が正の影響を、『社会参加』には属性の「年齢」が負の影響、養育態度の『自立促進』が正の影響を及ぼしていることが示された。

 以上の結果から、中国の母親は子どもを養育する際、特に大学生である子どもに対して、子どものことを在りのまま受入れ、子どもと対話をし、必要な時に援助を与える『受容』的養育態度を取る必要、また、学業だけではなく、意識的に子どもの生活能力を高めることや、社会に接触させることを促す『自立促進』的養育態度を取る必要があると考えられる。また、母親は『放任』、『過保護・干渉』的態度が子どもの自立に否定的な影響を及ぼすことを理解し、子どもとの関わりを大事にし、自分の子どもの能力を信じ、子どもの意志を尊重することが必要であると考えられる。さらに、母親は子どもを養育する際、学業中心より、長い目で子どもの将来のことを考える必要があると考えられる。しかし、子どもの将来に対する期待を過度に持たず、子どもに負担をかけないよう期待の度合いに注意することの必要性が示唆された。
最終更新日 2014年3月24日