氏名 |
李 棕柳 |
修了年度 |
2013年度(2014年1月提出) |
修士論文題目 |
中日接触場面の初対面二者会話と三者会話におけるスピーチレベル・シフトの考察―中国人上級学習者を対象として― |
要旨(500字以内) |
本研究では、中国人上級日本語学習者のスピーチレベルおよびそのシフトの使用実態を明らかにすることを目的とし、同年代初対面の二者会話と三者会話のデータをもとに、分析した。分析対象は、日本語母語話者(以下、母語話者)一名と中国人上級学習者(以下、学習者)一名ずつの二者グループ4つと、日本語母語話者二名と中国人上級学習者一名の三者グループ4つの計8グループである。分析の結果、学習者の同年代初対面の二者会話と三者会話におけるスピーチレベルの使用傾向を分析し、比較考察した。その結果、学習者は二者会話では相手に働きかける状況でスピーチレベル・シフトすることが多いのに対し、三者会話では自分の発話のなかで処理する際にスピーチレベル・シフトすることが多いことが明らかになった。シフトする回数においては、二者会話と三者会話に間に有意な差は見られなかったが、全体的に二者会話より三者会話において頻繁にシフトしている傾向が見られた。また、二者会話ではスピーチレベルを意識しながら親しみをもって会話を進めているのに対して、三者会話では緊張した心理状態がスピーチレベルの高さに現れ、心理的負担が大きいことが明らかになった。本研究の結果から、今後のコミュニケーション指導ならびスピーチレベル分野における日本語教育に示唆を与えられたと言える。 |
要旨(1000字以内) |
本研究では、中国人上級日本語学習者のスピーチレベルおよびそのシフトの使用実態を明らかにすることを目的とし、同年代初対面の二者会話と三者会話のデータをもとに、分析した。分析対象は、日本語母語話者(以下、母語話者)一名と中国人上級学習者(以下、学習者)一名の二者グループ4つと、日本語母語話者二名と中国人上級学習者一名の三者グループ4つの計8グループである。二者会話と三者会話において、学習者がそれぞれの会話で使用したスピーチレベルを基本レベル、アップシフトとダウンシフトの各側面から分析した結果、次のことが明らかになった。 まず、学習者は二者会話では主に基本レベルとして丁寧度が低い普通体を使用し、三者会話では主に丁寧度の高い丁寧体を使用していた。次に、学習者は二者会話では、相手に働きかける状況でスピーチレベル・シフトすることが多いことが明らかになった。また丁寧体を使用して距離を置いているにも関わらず、親しみを表す内容が多いため、心的距離が近くなることが考えられる結果になった。一方三者会話では、受身的な自己処理事項で多くスピーチレベル・シフトしていたことがわかった。これは、相手に働きかけるものではないため、実際には心理的距離が縮まらないことが考えられる結果になった。以上のことから、学習者は二者会話では心理的に相手に近づこうとするためにダウンシフトしやすく、アップシフトしても母語話者に心的に近づこうと、リラックスした状態で取り組んでいた様子が見られた。しかし、三者会話ではダウンシフトの使用は心的な要因よりも、言語的な自己処理型要因が多く、ダウンシフトしても心理的距離が近づいた会話が見られなかった。そして、頻繁に丁寧体にアップシフトしていたことから、常に母語話者と距離を置いていたことが考えられる。本研究では、学習者は二者会話と三者会話では違ったスピーチレベルの使用傾向が見られた。 本研究の結果から、学習者の初対面二者会話と三者会話におけるスピーチレベルの使用傾向が明らかになった。学習者にとって、二者会話ではスピーチレベルを意識しながら親しみをもって会話ができるのに対して、三者会話になると難しく感じ、心理的負担が大きくなることが全体的に観察された。この使用実態を踏まえて、今後のコミュニケーション指導ならびスピーチレベル分野での教育に示唆を与えられたと言えるのではないかと考える。 |
最終更新日 2014年3月24日 |