氏名

西澤 真奈未

修了年度

2013年度(2014年1月提出)

修士論文題目

日本人大学生の在日コリアンに対する態度―在日コリアンおよび外国人接触との関連から

要旨

(500字以内)

 日本人大学生の在日コリアンに対する態度と、異文化接触体験が態度に及ぼす影響を明らかにするため、日本人大学生194名に質問紙調査を行い、統計的に分析した。
因子分析の結果、態度として「在日コリアンとの共生」「制度的受容」「在日コリアンに対する関心」「異質者としての認識」「日本社会への同化要請」の5つの態度が抽出された。さらに、重回帰分析結果、異文化接触体験と属性が態度に及ぼす影響としては、「在日コリアンとの共生」には在日コリアンとの「間接的接触」、外国人との「メディア接触」と「非接触(負)」、「渡航国数」が、「制度的受容」には「年齢」が、「在日コリアンに対する関心」には在日コリアンとの「メディア接触」と「非接触(負)」、外国人との「協力関係」が、「異質者としての認識」には在日コリアンとの「メディア接触」と大学における「表面的制度支援」が、「日本社会への同化要請」には大学内の「表面的制度支援」と留学生との「協力関係(負)」が有意な影響を及ぼしていた。

 以上から、日本人大学生の在日コリアンに対する態度には、メディア接触や間接接触を含む異文化接触体験が影響を及ぼしていた。特に、大学の「表面的制度支援」が「異質者への認識」や「日本社会への同化要請」に正の影響を与えていたことから、大学は留学生を受け入れに留まらず、日本人学生と留学生の相互理解を促す授業作りなどの必要性が示唆された。

要旨

(1000字以内)

 本研究では、日本人大学生の在日コリアンに対する態度、および異文化接触体験や属性がそれらの態度に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし、関東と地方の大学に通う日本人大学生194名に質問紙調査を行い、統計的に分析した。
 研究課題1では、在日コリアンに対する態度について因子分析した結果、「在日コリアンとの共生」「制度的受容」「在日コリアンに対する関心」「異質者としての認識」「日本社会への同化要請」の5つの態度が抽出された。研究課題2では、異文化接触体験について、まず、Alport(1954)の接触仮説の4つの接触条件をもとに、大学内における在日コリアンと外国人との接触体験を検討した。その結果、在日コリアンとの接触体験は「対等かつ親密・協力的な関係」「表面的制度支援」の2因子、外国人は「親密な関係」「協力関係」「表面的制度支援」「対等な関係」の4因子が抽出された。さらに、日常生活の挨拶程度の接触仮説を満たさない軽い接触、メディア接触、および周囲の人々の話などを通しての間接的な接触も広義の接触と捉え、日常生活全般における在日コリアンと外国人との接触経験を検討した。因子分析の結果、在日コリアンとの接触は「間接的接触」「メディア接触」「非接触」「表面的接触」「著名人との接近」の5因子、外国人との接触は「メディア接触」「間接的接触」「表面的接触」「非接触」の4因子が抽出された。最後に研究課題3では、在日コリアンに対する態度を従属変数、異文化接触体験と属性を独立変数として重回帰分析を行った結果、態度の「在日コリアンとの共生」には日常生活の在日コリアンとの「間接的接触」、外国人との「メディア接触」、「非接触(負)」「渡航国数」が、「制度的受容」には「年齢」が、「在日コリアンに対する関心」には日常生活の在日コリアンとの「メディア接触」と「非接触(負)」、大学内おける外国人との「協力関係」が、「異質者としての認識」には日常生活の在日コリアンとの「メディア接触」と大学における「表面的制度支援」が、「日本社会への同化要請」には大学内の留学生との「表面的制度支援」と「協力関係(負)」がそれぞれ有意な影響を及ぼしていた。

 以上から、日本人大学生の在日コリアンに対する態度には、メディア接触や間接的接触を含む異文化接触体験が影響を及ぼしていることが明らかとなった。特に、大学による「表面的制度支援」が「異質者への認識」や「日本社会への同化要請」に正の影響を与えていたことから、大学は留学生を受け入れることに留まらず、日本人学生と留学生の相互理解を促進するプログラムや授業作りなどをしていく必要が示唆された。
最終更新日 2014年3月24日