氏名

松野 志歩

修了年度

2013年度(2014年1月提出)

修士論文題目

日韓交流セミナーにおいて日本側学生は何を学んだか ―AUC-GS学習モデルによる異文化間葛藤と学びの関係―

要旨

(500字以内)

 本研究は、日本国内で開催された日韓交流セミナー時の日本側学生の学びを、異文化間葛藤および認識と行動の変化から分析した。
日本側学生の異文化間交流スタイルが葛藤克服型に該当するかを、異文化への気づき、理解、対処をみる「AUC-GS学習モデル」により類型化した。その結果、異文化性や葛藤理解の違いによる4タイプの交流スタイルがあらわれ、全16名中9名が気づき、葛藤の理解および対応をおこなっていた。

 全体的に交流時の葛藤の顕在化は少なかったが、葛藤の理解がなくても日本側学生は、対韓イメージの肯定的変化、視野の広がり、聞き返しや積極的な発言などの言語行動などを認識していた。しかし、交流時に困難を覚え自信が揺らいだ学生には、省察による交流意欲の向上や意識的な行動の改善がみられ、短期的な交流によっても自己の慣習的認識と行動が変わる変容的学習が起こりうることが示唆された。

要旨

(1000字以内)

 日本を訪れた外国人旅行者は2013年に初めて1000万人を超え、国内にいながらにして異文化に触れ交流する機会も増している。本研究は、日本で開催された短期的な日韓国際交流セミナーにおいて日本側大学生が何を学んだかを、1.葛藤の有無と学びとの関係、2.認識の変化、3.行動の変化の3点から分析し、国内における短期的な異文化間交流の意義と限界を明らかにすることを目的にした。
 研究課題1.日本側学生の異文化間交流スタイルが葛藤克服型に該当するかを、異文化への気づき(Awareness)、理解(Understanding)、対処(Coping)をみる「AUC-GS学習モデル」により類型化した。その結果、異文化性や葛藤理解の違いによる4タイプの交流スタイルがあらわれ、これまで概念的に予想できないとされていた異文化への気づきは否定するが文化差に起因する葛藤の理解はあるタイプの存在が新たに示された。また、交流時の葛藤の顕在化は少なく、文化差による葛藤の理解がなくとも、交流時に積極的な対応をするタイプもみられ、国内での短期的交流に実際の葛藤克服はあらわれにくいことが分かった。
 研究課題2.認識変化として、葛藤理解の有無に関わらず日本側学生は、短期的交流により対韓イメージの肯定的変化や視野の広がりを感じていたが、将来を考えるきっかけとしての評価は低く自己アイデンティティーの変化も見られなかった。しかし、交流時に困難を覚え自信が揺らいだ学生には、省察による交流意欲の向上や意識的な行動の改善がみられ、短期的な交流によっても自己の慣習的認識と行動が変わる変容的学習が起こりうることが示唆された。
 更に研究課題3として行動変化を伴ったか調べたところ、日本側学生は韓国側学生との交流時に積極的な発言と質問、繰り返しと聞き返し、およびストレートに意見を言うという言語行動の変化を意識しており、実際の聞き返しも事前準備時に比べ積極的におこなわれたことが明らかになった。

 本研究は、従来日本語学習者やゲスト側への効果が検証されがちだった日本国内の異文化間交流が、日本側学生にどのような学びの場となりうるかを検証した点で意義があると思われる。
最終更新日 2014年3月24日