氏名

金 智英

修了年度

2013年度(2014年1月提出)

修士論文題目

韓国語のコロケーション習得に及ぼす語彙指導の効果 −KFL環境の日本人学習者を対象に−

要旨

(500字以内)

 本研究は、KFL(Korean as a Foreign Language)環境の学習者を対象に、韓国語のコロケーションの指導方法によってその学習効果と長期保持に差があるかを明らかにすることを目的とした。そのため、日本語を母語とし、日本で韓国語を学ぶ学習者91人を、文脈指導グループと、非文脈指導グループに分けてコロケーションの指導を行った。その後、直後テストと遅延テストを実施し、理解知識と産出知識においての学習効果と長期保持の程度を調べた。
理解知識の面では、非文脈指導の方が文脈指導に比べて学習効果が高かった。長期保持の面では、両指導による差はみられなかった。しかし、文脈指導は、直後と遅延テストの得点に大きな差がなかったことから、長期保持へ繋がる可能性が示唆された。非文脈指導は、直後と遅延テストの得点に差が大きかったが、文脈指導グループより高い得点が維持された。

 産出知識の面においては、両指導の学習効果の差がみられなかったことから、コロケーションの産出知識は指導法のタイプに影響されないことが分かった。長期保持の面においても、両指導に差はみられなかったが、理解知識の面と同様、文脈的指導が長期保持へ繋がる可能性があることが示唆された。

要旨

(1000字以内)

 近年、外国語の習得において語彙教育の重要性が強調される中、語彙同士の共起関係であるコロケーション(collocation)に注目した研究が多く見られる。しかし、言語系統的に隣接した韓国語と日本語は異なるコロケーションが使われる場合が多く、習得に難点がみられるが、効果的なコロケーション習得のための指導法に関する研究はほとんどない現状である。
そこで本研究は、KFL(Korean as a Foreign Language)環境の学習者を対象に、指導方法によって韓国語のコロケーションの学習効果と長期保持に差があるかを明らかにし、より効果的な指導法を探ることを目的とした。そのため、韓国語と類似性の高い母語を持ち、その中で最も学習者数が多いとされている日本人学習者91人を対象に、文脈的コロケーション指導と、非文脈的コロケーション指導を行った。その後、直後テストと1週間後の遅延テストを理解知識と産出知識に分けて実施した。
 実験の結果、理解知識の面は非文脈指導の学習効果が高かった。長期保持の面では、両指導による差はみられなかった。しかし、文脈指導は直後と遅延テストの得点に大きな差がなかったことから、長期保持へ繋がる可能性があることが示唆された。非文脈指導は、直後と遅延テストの得点に差が大きかったが、文脈指導グループより高い得点が維持された。
産出知識の面においては、両指導の学習効果に差がみられなかったことから、コロケーションの産出知識は指導法のタイプに影響されないことが分かった。長期保持の面においても、両指導に差はみられなかったが、理解知識の面と同様、文脈的指導が長期保持へ繋がる可能性が示唆された。
 文脈指導は直後と遅延テストの成績の差は大きくないが、全体的に成績が低かった。その理由を、語彙に触れた回数が多かった点、認知的負荷の高いタスクであった点、語彙習得には時間がかかるとされる文脈中心語彙指導の特徴という3点から探った。
非文脈指導は直後テストで成績が高く、遅延テストにおいて多くの記憶の損失がみられた。その理由を、非文脈指導は語彙習得が比較的早くできるという点、語彙に触れた回数が少なかった点、認知的負荷が弱かった点の3点から探ることができた。

 本研究は、韓国語コロケーションの習得において、KFL環境の場合、学習者のL1を用いた明示的な非文脈指導の方が理解知識の面においてより効果的で、文脈指導は理解と産出の両面において長期保持できる可能性があることが明らかとなった。

最終更新日 2014年3月24日