氏名 |
井上 恵 |
修了年度 |
2013年度(2014年1月提出) |
修士論文題目 |
在日文系中国人留学生の就業動機と就職不安の関連 |
要旨(500字以内) |
留学生30万人計画」により、在日留学生数は増加傾向にあるが、卒業後の就職は厳しい状況に置かれている。本論文は、留学生に対する就職サポートを有効に行うため、就業動機および就職不安の構造を明らかにすることを目的とした。その中でも数の多い文系中国人留学生109名を対象に質問紙調査を行い、統計的に分析した。因子分析の結果、就業動機は<自己向上><外発的動機><社会貢献><社会的地位獲得><人的ネットワーク>の5因子、就職不安は<自己理解・能力不足><人間関係困難><勤務地予測困難><家庭との両立困難><不安なし>の5因子から構成されることがわかった。また、就業動機と属性が就職不安に与える影響を検討するために重回帰分析を行った結果、<自己向上>と<外発的動機>が共に多くの就職不安に影響を与えていることがわかった。<自己向上>と<外発的動機>が正の影響を与えていたのは、<自己理解・能力不足><人間関係困難><家庭との両立困難>で、それぞれ日本語レベル(負)、人的ネットワーク(負)、人的ネットワーク(正)と共に影響を与えていた。今回の結果から、就業動機を高次のものとし、明確化させる就職サポートをすることが、就職不安の低減に有効であることが示唆された。 |
要旨(1000字以内) |
「留学生30万人計画」により、日本における留学生数は増加傾向を示している。特に、文系中国人留学生は、留学生の中でも多数を占め、彼らの卒業後の進路は今後の計画達成にとって重要である。しかし、文系中国人留学生の卒業後の就職は、日中両国において厳しい状況に置かれている。本論文は、留学生に対する就職サポートが、十分に行われていない現状を問題として捉え、大学における在日文系中国人留学生に対する就職サポートを有効に行うため、就業動機および就職不安の構造を明らかにすることを目的とした。在日文系中国人留学生109名を対象に質問紙調査を行い、統計的分析を行った。 因子分析の結果、在日文系中国人留学生の就業動機は<自己向上><外発的動機><社会貢献><社会的地位獲得><人的ネットワーク>の5因子から構成されることが明らかになった。また、在日文系中国人留学生の就職不安は、<自己理解・能力不足><人間関係困難><勤務地予測困難><家庭との両立困難><不安なし>の5因子から構成されることが明らかになった。次に、就業動機5因子、就職不安5因子、日本語レベル、滞日年数の間に関連があるかどうかをみるために、相関分析を行った。その結果いくつかの因子間に中程度の相関がみられ、それぞれが互いに関連しあっていることがわかった。その後、就業動機5因子、日本語レベル、滞日年数が就職不安に影響を与えているかどうか検討するために、ステップワイズ法による重回帰分析を行った。その結果、就職不安<自己理解・能力不足>には、就業動機<自己向上><外発的動機>が正の影響、また<日本語レベル>が負の影響を与えていた。就職不安<人間関係困難>には、就業動機<自己向上><外発的動機>が正の影響、<人的ネットワーク>が負の影響を与えていた。就職不安<勤務地予測困難>には、就業動機<社会的地位獲得>が正の影響、<社会貢献>が負の影響を与えていた。就職不安<家庭との両立困難>には、就業動機<自己向上><外発的動機>、<人的ネットワーク>が正の影響を与えていた。就職不安<不安なし>はどの項目とも有意な関係がみられなかった。 今回の結果から、在日文系中国人留学生に特徴的な就業動機、就職不安が明らかになり、特に、漠然とした自己向上動機、外発的動機が就職不安に影響していることがわかった。そのことから、就業動機を高次のものとし、明確化させる就職サポートをすることが、就職不安の低減に有効であることが示唆された。 |
最終更新日 2014年3月24日 |