氏名

和田 薫子

修了年度

2012年度(2013年1月提出)

修士論文題目

カナダ在住日本人女性の就労における葛藤と異文化受容態度との関連

要旨

(500字以内)

 近年、カナダで仕事をする日本人女性が増加するにつれ、就労での葛藤も多様化している。そこで、本研究はカナダ在住の日本人女性就労者の異文化受容態度、就労における葛藤、それらの関連を明らかにするために、93名を対象に質問紙調査を行い、統計的に分析した。因子分析の結果、対象者には「同化」、「日本文化分離」、「統合」、「第三文化分離」、「周辺化」の異文化受容態度があり、就労において「不満足な職務内容」、「違和感のある同僚の態度」、「疎外感」、「ハラスメント」、「難しい人間関係」、「言語能力不足による意思不疎通」に葛藤を感じていた。さらに、「同化」には「カナダ滞在歴(正)」、「カナダ職務歴(負)」が、「日本文化分離」には「ハラスメント(負)」、「日常英語レベル(負)」、「日本人社員割合(正)」が、また、「統合」には「日常英語レベル(正)」、「カナダ滞在歴(負)」が、「第三文化分離」には「疎外感(正)」が、「周辺化」には「違和感のある同僚の態度(負)」、「言語能力不足による意思不疎通(正)」が影響を与えていた。以上の結果から、第二言語能力と就労における対人葛藤がカナダ在住日本人女性就労者の異文化受容態度の決定要因であることが示唆された。

要旨

(1000字以内)

  日本におけるグローバル化が進む昨今、海外に移住する日本人は増加している。カナダで生活をしている日本人女性はホスト文化の受容や自文化を保持しながら生活しており、これは異文化受容態度として定義される。また、海外では就労において異文化接触を始めとする様々な葛藤があると考えられる。そこで、本研究はカナダ在住の日本人女性就労者の異文化受容態度、就労における葛藤、それらの関連を明らかにすることを目的とし、カナダ在住の日本人女性就労者93名を対象に質問紙調査を行い、統計的に分析した。
 研究課題1では、対象者の異文化受容態度について因子分析をした結果、「同化」、「日本文化分離」、「統合」、「第三文化分離」、「周辺化」の5因子が抽出された。研究課題2では、対象者の就労における葛藤について因子分析をした結果、「不満足な職務内容」、「違和感のある同僚の態度」、「疎外感」、「ハラスメント」、「難しい人間関係」、「言語能力不足による意思不疎通」の6因子が抽出された。研究課題3では、異文化受容態度に影響を与えている要因を明らかにするために重回帰分析をした結果、「同化」には「カナダ滞在歴」が正の影響、「カナダ職務歴」が負の影響を与えており、「日本文化分離」には「ハラスメント」と「日常英語レベル」が負の影響、「日本人社員割合」が正の影響を与えていたことが示された。また、「統合」には「日常英語レベル」が正の影響、「カナダ滞在歴」が負の影響を、「第三文化分離」には「疎外感」が正の影響を、さらに、「周辺化」には「違和感のある同僚の態度」が負の影響、「言語能力不足による意思不疎通」が正の影響を与えていたことが明らかとなった。このことから、第二言語能力と就労における対人葛藤がカナダ在住日本人女性就労者の異文化受容態度の決定要因であり、海外で仕事をする日本人女性への第二言語習得と異文化理解の支援の必要性が示唆された。本研究の結果は、グローバル社会において日本人女性がより活躍できる場を広げるための一助になり得るものと考えられる。今後の課題としては、異文化受容態度の変容過程を質的に探り、何が異文化受容態度に影響を与えているのか解明することが挙げられる。また、日本人女性のキャリア形成意識を検討し、異文化受容態度、就労における葛藤、キャリア形成意識の関連を解明していきたい。
最終更新日 2013年3月5日