氏名 |
齋 瀟 瀟 |
修了年度 |
2012年度(2013年1月提出) |
修士論文題目 |
中国人初級日本語学習者に対する持続可能性読解教育の提案 |
要旨(500字以内) |
本研究では、中国の初級日本語学習者はオーセンティックな読み物を読むことにより、日本語を学ぶ言語活動とよりよく生きるという人間活動を密接につなげることを目標とし、持続可能性読解教育の実践を行った。先行研究から知見を得、「事前課題」、「母語をはじめとする既有能力の活用」と「活動の流れ」を取り入れ、活動をデザインした。研究課題1「学習者が読解活動においてオーセンティックなテキストの大意がとれるか」を探った。その結果、学習者は、活動を通してテキストの大意がとれたことが分かった。 |
要旨(1000字以内) |
持続可能性日本語教育においては、グローバル化に伴い激変している世界の中で、日本語の学習を追求するとともに、個人の持続可能な生き方を追求することも要求される。その考えの下で、本研究では、中国の大学における初級日本語学習者がオーセンティックな読み物を初級段階から導入する可能性を探る。またこのような読みにより学習者は自分たちが生きている世界についての認識を深めることができると考えるため、日本語を学ぶ言語活動とよりよく生きるという人間活動を密接につなげることを目標とし、持続可能性読解教育の実践を行った。先行研究から知見を得、「事前課題」、「母語をはじめとする既有能力の活用」と「活動の流れ」を取り入れ、実践を行い、データを収集した。研究課題1においては中国人初級学習者が読解活動においてオーセンティックなテキストの大意がとれるかという点に着目し、活動中の学習者間のやりとりを談話分析の手法を援用し、分析を行った。その結果、学習者たちは、仲間との対話を通して自分たちの知的レベルに合ったオーセンティックなテキストの大意がとれたことが分かった。 研究課題2においては学習者がテキストの大意を読みとった上でさらに世界認識が深化できたか、どのような過程を辿って深化したかを探った。そのために、各学習者がどのような立場に立ち、問題を考えようとしていたかという観点からやり取りデータを読み込んだ。その結果、学習者たちはテキストの内容をめぐって、読んだ内容をそのまま頭に入れているのではなく、問題に関わる様々な人の立場に立ち、問題を考えることによって、世界認識が深化したということが分かった。また、学習者たちはある問題に対して表面的に捉えるのではなく、その背後を探り、考えることを通して、激変するグローバル化の中で世界で何が起こっていたかという世界認識が深化した様子が推察された。 このようにオーセンティックな読み物を読むことを通して、日本語そのものだけを習得するではなく、学習者は自分たちが生きている世界に対する認識を深めることができたといえよう。つまり、日本語を学ぶ言語活動は学習者にとって人間活動から切り離され孤立した存在ではなく、より良く生きることとは何かについて考えることを提供する人間活動と一体化したものになったと考えられる。つまり、日本語を学ぶ言語活動と人間活動を密接につなげることが可能となることが示唆される。 |
最終更新日 2013年3月5日 |