氏名 |
王 ゲツ |
修了年度 |
2012年度(2013年1月提出) |
修士論文題目 |
中国人学習者と日本語母語話者による 「依頼」に関するEメールの相違点 |
要旨(500字以内) |
本研究は、上下関係場面を設定しEメールでの「依頼」に焦点を当て分析した。分析データは日本語母語話者(以下、JN)と中国国内の中国人日本語学習者(以下、CL)各32名による計64通のEメールである。依頼の全体像を探るため、Eメールを「先行部」、「依頼部」、「終結部」に分け、分析枠組みとして「意味公式」を使用した。その結果、CLとJNでは各部において意味公式の種類、使用人数、使用回数に違いが見られた。「先行部」と「終結部」において、JNは依頼を実行する必要最小限の意味公式を使用し、簡潔で明確に書くことに配慮するが、CLは依頼以外の話題にも言及し、依頼しやすい雰囲気作りや人間関係の維持に配慮する傾向が観察された。「依頼部」において、JNは相手に準備の時間を与え、相手の都合を優先するが、CLはすぐ依頼の本題に入り、自分の都合を明確に相手に提示し、確実に同意を得るよう工夫する傾向が示された。 また、CLの問題点としては、@Eメールに慣れておらず手紙を書く感覚でEメールを作成する、A中国語から直訳した不自然な日本語を使用する、B目上の人に対して普通体や丁寧度の低い言葉を使用する、C話し言葉を多用する、DEメールではあまり使わない記号を使用することが示された。 CLがJNとのEメールによる異文化間コミュニケーションをより円滑に行えるよう、中国での日本語教育現場では、以上の問題点に留意した指導がなされる必要があると言える。 |
要旨(1000字以内) |
本研究は、Eメールでの「依頼」に焦点を当て、上下関係の場面を設定し、日本語母語話者(以下、JN)と中国人学習者(以下、CL)各32名による計64通のEメールを分析した。依頼の全体像を探るために、Eメールを「先行部」、「依頼部」、「終結部」に分け、分析枠組みとして「意味公式」を使用した。その結果、CLとJNには各部において意味公式の種類、使用人数、使用回数に違いが見られた。特にCLはJNより使用した意味公式の種類が多く、バラエティーに富んでいることが分かった。 具体的に、「先行部」においては、CLは「挨拶」、JNは「自己紹介」と「関係明示」を用いたことが見られた。「依頼部」においては、前置きとしてCLは「依頼導入」、「話題提起」、JNは「用件説明」を、都合尋ねとしてCLは「日時提案」、「場所提案」、JNは「日時伺い」を、依頼の確認としてCLだけが「意思確認」を使用したことが明らかになった。「終結部」においては、CLは「感謝」、JNは「個人情報提示」、「定型的な依頼」を使用したことが観察された。以上のことから、「先行部」において、JNは次の段階である依頼と密切な関係を持つ意味公式のみを用い、本題である依頼を実行するために最小限の内容を簡潔に書く傾向が示された。それに対し、CLは次の段階である依頼と密切な関係を持つ意味公式を使用していると共に、依頼とあまり関係がない意味公式も使用し、依頼以外の話題にも言及することで、依頼から感じる負担を軽減し、いい雰囲気を作り出し依頼しやすいように工夫している傾向が見られた。「依頼部」において、JNは相手に準備の時間を与え、相手の都合を優先している傾向が観察された。一方で、CLはすぐ依頼の本題に入り、自分の都合を明確に相手に提示し、確実に同意を得るように工夫しているが、相手に唐突な印象を与え、思いやりの意識が足りなく、相手に押し付けがましく思われる可能性がある。「終結部」において、JNはもう一度自分の名前や連絡先を提示し、依頼に関する連絡をもらいやすくさせ、依頼の意思を強く伝え、依頼を実行してもらうように工夫している。それに対し、CLは名前しか提示していないが、相手に丁寧なお礼の言葉で感謝の気持ちを表し、依頼の目的達成のみが狙いではなく、人間関係の維持に努めていることが窺える。 CLの問題点としては@Eメールの書き方に慣れておらず、手紙を書く感覚でEメールを作成、A中国語の表現を直訳した不自然な日本語を使用、B目上の人に対して普通体や丁寧度の低い言葉を使用、C話し言葉を多用、DEメールではあまり使わない記号を使用することなどが挙げられた。中国での日本語教育現場ではこれらの問題点を留意することで、より円滑な異文化間コミュニケーションに繋がると考えられる。 |
最終更新日 2013年3月5日 |