氏名

文 吉英

修了年度

2012年度(2013年1月提出)

修士論文題目

韓国人母親の教育価値観、子どもへの期待、養育態度との関連

要旨

(500字以内)

 昨今、韓国では親の教育熱が問題化されている。本研究は韓国人の親の過熱化した教育熱、親の意識や養育態度を改革するうえで把握する必要のある親の教育価値観、子どもへの期待、養育態度を検討することを目的とし、韓国のソウル、景機道に居住する小学生の母親126名を対象に質問紙調査を実施し、統計的分析を行った。
 その結果、子どもへの期待として『グローバル志向』、『優秀な成績』、『規律のある態度』、『豊富な遊び経験』の4因子が、また、養育態度として『同調』、『放任』、『受容』、『統制』、『過保護』、『一貫性のないしつけ』の6因子が抽出された。さらに、韓国人母親の養育態度に影響を及ぼす要因を検討するために重回帰分析を行った結果、『同調』には『優秀な成績』が、『放任』には『規則順守(負)』、『豊富な遊び経験』が、『受容』には『従順』、『自主独立』、『母の最終学歴』が、『統制』には『専門性(負)』、『意欲』、『社会化』、『グローバル志向』、『優秀な成績』が、『過保護』には『教師主導』、『グローバル志向』、『優秀な成績』が、『一貫性のないしつけ』には『母の最終学歴(負)』が影響していることがわかった。

要旨

(1000字以内)

   昨今、韓国では親の教育熱が問題化されている。韓国政府は教育熱の問題、特に私教育費の軽減のために様々な政策を行ってきたが、効果はあまりなかった。韓国の教育専門家たちは学校のみならず親の意識や態度も改革する必要があると主張してきた。親の意識、態度を改革するにあたり、まずその現状を把握する必要がある。そこで、本研究では韓国人母親の教育価値観、子どもへの期待、養育態度を検討することを目的とし、韓国のソウル・京機道に居住する小学生の子どもを持つ母親126名を対象に質問し調査を実施し、統計的分析を行った。
 研究課題1では、韓国人母親の子どもへの期待について因子分析を行った。その結果、『グローバル志向』、『優秀な成績』、『規律のある態度』、『豊富な遊び経験』の4因子が抽出された。研究課題2では、韓国人母親の養育態度がについて因子分析を行った。その結果、『同調』、『放任』、『受容』、『統制』、『過保護』、『一貫性のないしつけ』の6因子が抽出された。研究課題3では、加賀美(2007)の教育価値観尺度を用い、α係数の算出により信頼性を検討した結果、全次元において信頼性が十分確認された。研究課題4では、韓国人母親の養育態度に影響を及ぼす要因を検討するために重回帰分析を行った。その結果、『同調』的養育態度には『優秀な成績』が正の影響を、『放任』的養育態度には『規則順守』が負の影響、『豊富な遊び経験』が正の影響を、『受容』的養育態度には『従順』、『自主独立』、『母親の最終学歴』が正の影響を、『統制』的養育態度には『専門性』が負の影響、『意欲』、『社会化』、『グローバル志向』、『優秀な成績』が正の影響を、『過保護』的養育態度には『教師主導』、『グローバル志向』、『優秀な成績』が正の影響を、『一貫性のないしつけ』には『母親の最終学歴』が負の影響を及ぼしていることが示された。
 以上の結果から、韓国人母親のそれぞれの養育態度は教育価値観、子どもへの期待、母の最終学歴という要因と関連していることが明らかになった。特に、子どもがグローバル志向を持ってほしいという望みと学業面において良い成績を取ってほしいという望みが数多くの養育態度に関連していることから、今後の韓国の教育のあり方を考える際に、政府の政策に加え、親の子どもへの期待をはじめ教育に対する意識や態度を考慮する必要性が示唆された。今後は、子どもの養育には父親の影響もあると考えられるため、父親を対象とする研究も行うべきである。また、親のみならず親に対する子どもの認識も検討することも必要であると考えられる。
最終更新日 2013年3月5日