氏名 |
金 秀 珍 |
修了年度 |
2012年度(2013年1月提出) |
修士論文題目 |
漢語動詞の習得からみる言語転移の可能性 ―韓国人日本語学習者を中心に― |
要旨(500字以内) |
本研究では、韓国の大学で日本語を学んでいる学習者と同大学卒業生の翻訳会の会員、また日本で居住している英語を母語とする学習者を対象に、漢語動詞の習得における母語の影響を質問紙調査を通して調べた。その結果、「母語の韓国語の影響である」と結論付けていた今までの韓国人学習者の漢語動詞の使用における誤用の原因に、母語の転移と共に事態把握の主観性が強く現れる日本語の特徴が関わっている可能性が示唆された。以下、本研究の結果を簡単にまとめる。 |
要旨(1000字以内) |
本研究では、韓国の大学で日本語を学んでいる学習者と同大学卒業生の翻訳会の会員、また日本で居住している英語を母語とする学習者を対象に、漢語動詞の習得における母語の影響を質問紙調査を通して調べた。その結果、「母語の韓国語の影響である」と結論付けていた今までの韓国人学習者の漢語動詞の使用における誤用の原因に、母語の転移と共に事態把握の主観性が強く現れる日本語の特徴が関わっている可能性が示唆された。以下、本研究の結果を簡単にまとめる。 第一に、漢語動詞の習得に習熟度による有意義な差があることが確認された。 韓国人学習者は習熟度が高くなるにつれて正答率が上がり、また習熟度が高くなるほど「ニナル形」を選ぶ割合も少なくなることがわかった。また「する−??」項目の正しい習得は、中級以上のレベルに達して少しずつ進むことが確認できた。 第二に、韓国人学習者の漢語動詞の習得で幅広く母語の転移が認められる。英語を母語とする学習者の場合は一部の項目で事態把握のしかたの一致・不一致が正答率に影響を及ぼさないものがあり、韓国人学習者に比べ母語転移が低い程度にとどまった。これは韓国人学習者では漢語動詞が「漢語(名詞)+接尾「する(hada)」と言語形式が極めて類似しているために、母語が転移しやすかったが、これに対し英語を母語とする学習者では「漢語(名詞)+接尾「する(hada)」といった言語形式がないため、母語が韓国人学習者に比べ転移しにくかったと考えられる。 第三に、本研究を通して漢語動詞における誤用の原因として、母語の転移と共に何かが作用している可能性があることが示唆された。それが具体的に何かは確定できないが、多くの先行研究からその解釈の手がかりを少しだけ探ってみると次のようなことが考えられる。 ?(2001)では、韓国語は視点が固定的で、動作主に視点を合わせる傾向があり、日本語は視点の移動が比較的に自由で動作主が主語としての役割を奪われることも多いと指摘し、日本語が主観的に捉える傾向があることを示唆した。森山(2008)では、日本語は「私からの見え」から表現する言語、つまり「主観的把握型」であると述べ、森山(2010)ではこのような「スルのナル性」は、事態把握の主観性が強く現れる日本語の特徴の現しであり、日本語特有の特徴として注目した。本研究を通して、漢語動詞の使用からこのような日本語事態把握のしかたの特徴的一面を覗くことができたと言える。 |
最終更新日 2013年3月5日 |