氏名 |
呉 映 セン |
修了年度 |
2012年度(2013年1月提出) |
修士論文題目 |
接触場面における台湾人上級日本語学習者と日本語母語話者による 討論談話の分析 ―意見交換及び意見表明に着目して― |
要旨(500字以内) |
本研究は、台湾人日本語学習者(TL)と日本語母語話者(NS)との接触場面における討論談話の意見交換と意見表明の特徴及び、両者の相違点を明らかにすることを目的とし、単位方略に基づいて分析を行った。その結果、意見交換に関して、TLとNSともに「情報の叙述」、「見解の表明」と「見解への同意」を多用することが見られ、自分の主張について見解を表明する「見解の表明」と「感想の叙述」が相手の主張に関する見解を表明する「評価の表明」と「困惑の表明」より多用することも観察された。なお、「事実の指摘」、「事情の説明」、「情報提供への注目表示」の使用率に有意差があることからは、NSは討論談話を行う際、TLより客観的な情報を重視していると考えられる。意見表明に関して、意志・希望を表明する際に、学習者は「提案の提示」を好むことが見られ、母語話者は「意向の表明」を多く使うことが観察された。そして、学習者も母語話者も「意向への不同意」の使用が観察されなかった。TLとNSともに、相手の意見に直接的な不同意を言わず、より円滑の討論場面を求めていると考えられる。両者の相違点については、「意向への同意」に有意差が見られた。NSはTLの意見に合わせる傾向があると示唆された。 |
要旨(1000字以内) |
本研究は、台湾人日本語学習者(TL)と日本語母語話者(NS)との台日接触場面における討論談話の意見交換と意見表明の使用傾向、特徴及び、両者の意見交換と意見表明の相違点を明らかにすることを目的とする。 台湾の大学に在籍しているNSと、JFL環境で日本語能力試験一級に合格している日本滞在歴半年以内のTL(全員日本語学科に在籍している)を対象者とする。ロールプレイの場面は学習者にとっても母語話者にとっても身近なもので、日常生活に起こりうる場面を選んだ。学園祭の打ち上げ会の場所として、一方はカラオケがいいと主張するのに対し、一方は食べ放題のレストランがいいと設定した。吉岡(1993)は、談話参加者はそれぞれの目的に向かって、会話を展開し、相手の出方に対応しながら、目的の方向へコミュニケーションを進展させようとしているため、談話進展の方略(ストラテジー)が重要になると指摘している。そこで本研究は、単位方略の概念を用いて分析を行った。 その結果、意見交換に関して、TLとNSともに「情報の叙述」、「見解の表明」と「見解への同意」を多用することが見られた。自分の主張について見解を表明する「見解の表明」と「感想の叙述」が相手の主張に関する見解を表明する「評価の表明」と「困惑の表明」より多用することも観察された。これは討論の際に、TLもNSも相手の主張について意見や見解を述べるより、自分の主張に主な重点を置いており、メリットや特長などを述べることを好むと考えられる。なお、「事実の指摘」、「事情の説明」、「情報提供への注目表示」、「情報叙述の要求」と「情報の確認」の使用率に有意に差があることからは、討論談話を行う際、NSはTLより客観的な情報を重視していることが分かる。そして、TLは議題に直接関連せず、相手に関する情報を求めることによって相手に関心を示しつつ、話題を継続する傾向がよくあると考えられる。意見表明に関して、意志・希望を表明する際に、TLは「提案の提示」を好むことが見られ、NSは「意向の表明」を多く使うことが観察された。そして、TLもNSも「意向への不同意」の使用が観察されなかった。TLとNSともに、相手の意見に直接的な不同意を言わず、より円滑な討論場面を求めていると考えられる。相違点については、「意向への同意」に有意差が見られた。つまりNSはTLの意見に合わせる傾向があると示唆された。 このように、文化背景が異なる台日両国の接触場面における討論談話を解明することによって、両者間の談話スタイルの違いがもたらす誤解を防ぐことが重要であるといえよう。また、そうしたことで、より順調なコミュニケーション場面の築くことにも繋がると思われる。 |
最終更新日 2013年3月5日 |