氏名

秦 松梅

修了年度

2011年度(2012年1月提出)

修士論文題目

事前準備、日本語母語話者を導入したグループワークの試み
−中国の大学における日本語専攻会話授業の場合−

要旨

(500字以内)

 本研究では、会話授業の改善を目指して中国の大学における日本語専攻会話授業に事前準備と日本語母語話者を導入したグループワークの実践を行った。そこからデータを収集し、検討することで、会話教育のあり方について提言することを目的とし、学習者がこの新たなデザインに対する受け止め方をM-GTAを援用して探った。分析した結果、今回の活動は学習者から肯定的な受け止め方を得た。そして、GWのやり取りデータを用いて学習者同士はどのようなやり取りをしているかを分析し、普段の授業と異なる五つの点で特徴づけることができた。(1)学習者は話に耳を傾けて、力を合わせて助け合う(2)根拠を持って自分の意見を言う(3)納得まで追究し、説明構築をする(4)異なる視点を共有し、仲間に傷つけないように反論する(5)やり取りを通して思考が広がることが分かった。日本語会話教育への提言として、会話授業の内容と学習者の能動性を重視すること、学習者の既有知識と周りのリソースを有効的に利用することと社会的関係性も学ぶことが必要である。今後は、長期的な実践を通して、本研究の結果を検証することと共に、学習者の内省活動で具体的な方法の提言を行うことと日本語母語話者の役割について詳しく調査する必要があると考える。

要旨

(1000字以内)

 近年、日中の経済的な結びつきが強くなってきおり、様々な分野で物的・人的交流が深まってきている。日本企業は中国への進出に伴い、日本語の統合的な能力がある人材を多く求めている。しかし、中国の大学で日本語を専攻している学習者は精読の力が優れているが、運用能力がついていない(堀口2003)、豊富な語彙量、高度な文法知識を持っているにも関わらず、簡単な日常会話も流暢にできず、運用能力が非常に低い(楊2006)という現状を踏まえて指摘されたものがある。
 本研究は会話授業を改善するために中国の大学における日本語専攻会話授業で中級レベル学習者17人を対象者として、事前準備と日本語母語話者を導入し、グループワークで実践を行った。そこからデータを収集し、検討することで、会話教育のあり方について提言することを目的とする。そのため、二つの研究課題を設定した。@学習者は事前準備と日本語母語話者の参加を導入した授業に対してどのような受け止め方を形成しているか。A学習者同士は会話授業においてどのようなやり取りをしているか。
 活動後の振り返りシート及びフォローアップインタビューを文字起こしてデータとしてM-GTAを援用し、課題1を分析した。活動の中のやり取りの文字起こし資料を用いて課題2を分析した。その結果以下のようなことが分かった。学習者は事前準備と日本語母語話者の参加を導入した授業に肯定的な評価を得た。事前準備をすることによって、既有知識の統合的な運用することによって、認知的な負担や心理的な負担を軽減できる。日本語母語話者に授業を参加できるように、できるだけ日本語を使ってやり取りしている姿勢が見られた。やり取りの過程に学習者は今まで勉強していた知識やストラテジ−を利用しながらお互いに勉強し合う形で会話授業に参加している。そして、GWのやり取りデータの中に、普段の授業と異なる五つの点で特徴づけることができた。(1)学習者は話に耳を傾けて、力を合わせて助け合う(2)根拠を持って自分の意見を言う(3)納得まで追究し、説明構築をする(4)異なる視点を共有し、仲間に傷つけないように反論する(5)やり取りを通して思考が広がることが分かった。日本語会話教育への提言として、会話授業の内容と学習者の能動性を重視すること、学習者の既有知識と周りのリソースを有効的に利用することと社会的関係性も学ぶことが必要である。今後は、長期的な実践を通して、本研究の結果を検証することと共に、学習者の内省活動で具体的な方法を考えることと日本語母語話者の役割について調査する必要があると考える。
最終更新日 2012年11月10日