氏名

メッグリアングライ ポンティパー

修了年度

2011年度(2012年1月提出)

修士論文題目

携帯メールのおける勧誘に対する断り及びその応答
−タイ人日本語学習者と日本語母語話者を比較して―−

要旨

(500字以内)

 本研究では生活場面での日本語学習の効率を高めるために、異文化間コミュニケーション上に摩擦が発生しやすい「断り」場面を取り上げ、日本語母語話者(JNS)とタイ人日本語学習者(TNS)はどの様に日本語でメールのやりとりをしているかに着目し、その特徴を明らかにすることを目的とする。
その結果、JNSとTNSの断りの相違点として、JNSがTNSより[謝罪]と[好意的反応]という機能的要素を多用していることが分かった。一方、両者の共通点として、断りの中心部分に[言い訳]と[不可]が不可欠な機能的要素であり、それらの要素の前置きとして[共感]を使用し、その後に機会があれば一緒に行動したい気持ちを示す[関係維持]を使用したりする場合があると分かった。つまり、断りは義務的要素([言い訳]と[不可])と付随的要素([共感]と[関係維持])の2つの要素で構成されていることが明らかになった。
 また、応答の方でJNSとTNSの相違点として、JNSがTNSより[関係維持]と[会話円滑]を多用しているが、TNSは JNSで見られなかった[応答無し]という機能的要素を使用していることが分かった。一方、共通点として、両者とも相手の断りを受け、[承知][遺憾]と[条件提示]を使用していると分かった。

要旨

(1000字以内)

 本研究では生活場面での日本語学習の効率を高めるために、異文化間コミュニケーション上に摩擦が発生しやすい「断り」場面を取り上げ、日本語母語話者(JNS)とタイ人日本語学習者(TNS)はどの様に日本語でメールのやりとりをしているかに着目し、その特徴を明らかにすることを目的とする。
 「断り」発話については、コミュニケーション機能及び機能的要素という概念を用いて、使用人数の比率と使用回数の平均値の比較という2つの観点から分析を試みた。その結果、JNSとTNSの断りの相違点として、JNSがTNSより[謝罪]と[好意的反応]という機能的要素を多用していることが分かった。一方、両者の共通点として、断りの中心部分に[言い訳]と[不可]が不可欠な機能的要素であり、それらの要素の前置きとして[共感]を使用し、その後に機会があれば一緒に行動したい気持ちを示す[関係維持]を使用したりする場合があると分かった。つまり、断りは義務的要素([言い訳]と[不可])と付随的要素([共感]と[関係維持])の2つの要素で構成されていることが明らかになった。
 断りに対する「応答」については、JNSとTNSの相違点として、JNSがTNSより[関係維持]と[会話円滑]を多用しているが、TNSは JNSで見られなかった[応答無し]という機能的要素を使用していることが分かった。一方、共通点として、両者とも相手の断りを受け、[承知][遺憾]と[条件提示]を使用していると分かった。
 以上の結果から、JNSは断りにおいても応答においても、相手への配慮が不可欠な要素だと考えられる。また、日本人の断りに対する曖昧性に関しては、本研究では媒体が携帯メールである為、相手の顔の表情等が伺えないので、直接的な断り方をする必要があったと考えられる。さらに、応答においては場の空気を悪化させず、かつ相手との関係を維持しようとしている姿勢を表す為に、断りの承知だけでメールを締めくくらずに、相手との共通の話題を話したり、社交辞令的に次に機会があれば一緒に行動したい気持ちを表したりしていると考えられる。
 一方、TNSはJNSとは勧誘と断りに対する意識が異なるため、断り方に違いを生み出すと推測される。つまり、TNSの断りには相手への申し訳なさをあまり感じさせることなく、しっかりと断りの理由を述べ、勧誘を断っていた。応答に関してはJNSと同様に断りを受諾し、遺憾な気持ちを表す場合がほとんどだが、何も返事しないケースも見られた。応答無しの理由として、断られた後に両者が共に行動することが不可能だと承知した為、返事しなくても誘い側が断りを受諾しているという暗黙のルールが働いていると考えられる。
最終更新日 2012年11月10日