氏名

池田 聖子

修了年度

2011年度(2012年1月提出)

修士論文題目

インドネシア人看護師候補者の援助ニーズ
−EPA応募動機、困難との関連から−

要旨

(500字以内)

 経済連携協定(EPA)に基づく外国人看護師・介護福祉士の受け入れには多くの問題が浮上している。本研究では、インドネシア人看護師候補者の援助ニーズを明らかにするとともに、EPA応募動機、困難との関連性を探るため質問紙調査を実施し、得られた117名の回答を統計的に分析した。
 その結果、援助ニーズに影響を及ぼす要因として、以下のことが明らかになった。第1に、海外に出たいという動機でEPAに応募し、学習サポートの不足は感じていないが日常生活に困難を感じている候補者は状況を理解してほしいと望んでいる、第2に、キャリアアップを目指すと同時にEPAに興味を持ったという動機でEPAに応募し、日常生活に困難を感じている候補者は学習や仕事に関して具体的に援助してほしいと望んでいる、第3に、経済的豊かさを手に入れたいという動機でEPAに応募した候補者は仕事に関する指導を受けたいと望んでいる、第4に、海外に出たいという動機でEPAに応募した候補者は日本での生活や仕事に関する情報を提供してほしいと望んでいる、第5に、年齢が若い候補者は看護師国家試験に向けてサポートをしてほしいと望んでいる、ということが示された。 

要旨

(1000字以内)

 近年、経済のグローバル化が進み、日本政府は主要な貿易相手国との経済連携強化を図るため、経済連携協定(EPA)の締結を推進してきた。これにより、日本で初めて国策として外国人看護師・介護福祉士の受け入れが開始された。しかし、EPAに基づく看護師・介護福祉士の受け入れは国家試験の負担や支援体制の不備、受け入れ枠組みそのものへの疑問など多くの問題が浮上しており、看護師・介護福祉士候補者は日本での生活においてさまざまな困難を経験していると予想される。そこで、本研究ではインドネシア人看護師候補者の援助ニーズを明らかにするとともに、EPA応募動機、困難との関連性を探るため質問紙調査を実施し、得られた117名の回答を分析した。
 研究課題1では、EPA応募動機について因子分析を行った結果、「キャリアアップ」「経済的理由」「EPAへの興味」「消極的選択」「海外志向」という5因子が得られた。研究課題2では、困難について因子分析を行った結果、「日本語使用に伴う障壁」「生活上の困難」「環境への不適応」「キャリアの不活用」「学習サポートの不足」という5因子が得られた。研究課題3では、援助ニーズについて因子分析を行った結果、「状況理解」「具体的援助」「職務指導」「情報提供」「国家試験対策」という5因子が得られた。研究課題4では、援助ニーズに影響を及ぼす要因を検討するために重回帰分析を行った結果、以下の結果が得られた。第1に、海外に出たいという動機でEPAに応募し、学習サポートの不足は感じていないが日常生活に困難を感じている候補者は状況を理解してほしいと望んでいる、第2に、キャリアアップを目指すと同時にEPAに興味を持ったという動機でEPAに応募し、日常生活に困難を感じている候補者は学習や仕事に関して具体的に援助してほしいと望んでいる、第3に、経済的豊かさを手に入れたいという動機でEPAに応募した候補者は仕事に関する指導を受けたいと望んでいる、第4に、海外に出たいという動機でEPAに応募した候補者は日本での生活や仕事に関する情報を提供してほしいと望んでいる、第5に、年齢が若い候補者は看護師国家試験に向けてサポートをしてほしいと望んでいる、ということが示された。
 本研究の結果から、インドネシア人看護師候補者の援助ニーズおよびその背景要因が明らかとなり、候補者に届く支援を実現する上での示唆が得られた。
最終更新日 2012年11月10日