氏名

ミャッ・タズィン

修了年度

2010年度(2011年1月提出)

修士論文題目

依頼談話における日緬対照研究
−依頼部における依頼表現とストラテジーに着目して−

要旨

(500字以内)

 本研究は、日本語母語話者(以下JNS)とミャンマー語母語話者(以下MNS)の依頼言語行動における特徴を探る為、ロールプレイデータを用い、談話分析の観点から分析を行った。依頼を明言するまでのプロセスを明らかにすることを目的とし、依頼表現とストラテジーの種類、パターンに着目し、分析した。依頼表現について、JNSは「希望型」を多く用い、MNSは「直接要求型」を多く用いることが分かった。また、JNSもMNSも「協力要求型」と「許可願い型」をほぼ同じ割合で用いていることが示された。ストラテジーの使用では、JNSもMNSも「事情」を一番多く使用し、JNSは「前提確認」を多く用いるのに対し、MNSは「呼びかけ」を多く使用する傾向が見られた。また、JNSは「事情先行型」「前提確認先行型」を多く用いていたが、MNSは「呼びかけ先行型」を最も用いる傾向が見られた。以上の結果から、JNSは「確認をしつつ、相手の反応を待ち、自分の希望を理解してもらい、展開していく」という展開の仕方を好み、一方、MNSは「これから依頼をするという合図を出し、自分の意思を直接伝えて、展開していく」という展開の仕方を好む傾向があると考えられる。

要旨

(1000字以内)

 数あるコミュニケーションの中で、最も難しいものの一つとして「依頼」が挙げられる。依頼を申し出るときは相手に気を配りながら申し出るが、その表現やストラテジーにより、不快感を与えたり、誤解を招いてしまったりすることがあると考えられる。日緬の言語は語順が似ているというような言語的に類似している側面があるが、反対に依頼に対する表現の仕方やストラテジーにおいては、異なる側面があると考えられる。
 そこで、本研究では、日緬母語話者の依頼表現とストラテジーの種類、パターンを分析し、依頼を明言するまでのプロセスを明らかにすることを目的とした。大学生の同等関係における日本語母語話者(以下JNS )46組とミャンマー語母語話者(以下MNS)46組を対象に、「ノートを借りる」場面のロールプレイを行った。そのデータを談話分析の観点から分析した。依頼表現を「直接要求型」「協力要求型」「希望型」「許可願い型」「希望許可願い型」「希望確認型」という6種類に分類した。また、依頼のストラテジーを「話題予告」「前提確認」「事情」「仮定」「謝罪」「呼びかけ」の6種類に分類し、パターン化を行った。
 まず、依頼表現については、JNSとMNSの特徴を相違点と共通点から分析した。相違点として、JNSは「希望型」をMNSより多く用い、MNSは「直接要求型」をJNSより多く用いることが分かった。共通点として、「協力要求型」をJNSもMNSもほぼ同じ使用率で用いており、全体の3割を占めていることが分かった。「許可願い型」の使用もほぼ同じ割合で用いられているが、全体の1割しかなかったことが示された。
 次に、ストラテジーの使用では、種類別の使用と出現パターンの2つの観点から分析を試みた。JNSもMNSも「事情」を一番多く使用し、JNSは「前提確認」を多く用いるのに対し、MNSは「呼びかけ」を多く使用する傾向が見られた。また、JNSは「事情」のみのパターン、あるいは「事情先行型」「前提確認先行型」を多く用いていたが、MNSは「呼びかけ先行型」を最も使用する傾向が見られた。
 以上の結果から、JNSは「確認をしつつ、相手の反応を待ち、自分の希望を理解してもらい、展開していく」という展開の仕方を好み、一方、MNSは「これから依頼をするという合図を出し、自分の意思を直接伝えて展開していく」という展開の仕方を好む傾向がある。さらに、JNSの依頼行動は相手に負担をかける「私の為の依頼」(笹川1999)であり、一方MNSの依頼行動は相手に頼り、直接に伝える「あなただから頼む」(笹川1999)として捉えることができる。
最終更新日 2011年4月1日