氏名 |
高 瑩 |
修了年度 |
2010年度(2011年1月提出) |
修士論文題目 |
JFL環境の中国人上級日本語学習者に対するグループワークによる多義動詞学習の試み −「掛ける」を例に− |
要旨(500字以内) |
日本語学習者が多義動詞を学習する際に、辞書の解釈や教師の説明に依存する従来のやり方から脱却して、既有能力を発揮し能動的に学んでいけないかを考えて、「掛ける」を例にして新しい学習デザインを設けた。T、「掛ける」の既習用例を想起する、U、例文15個をいくつかのグループに分類する、V、イメージと全体的理解をまとめる、という三ステップを通して、TとUを個人ワークの次にグループワーク、Vをグループワークの形で活動を行った。その結果、学習者が中国語での意味、格助詞と自他性、漢字、動作の動き、動作のもたらす変化、動詞が使われる状況に注目して、自分の既有知識と生活体験、認知能力を生かして「掛ける」の意味を吟味・理解していることがわかった。また、仲間との対話によってグループ全体の理解が深化して、「掛ける」に対する意味理解は中国語の訳語に依拠した限られたものから、まとまりを持つ全体的な理解に形成していったことがわかった。更に、学習者は本学習活動を好意的に受け止めていることも伺えた。よって学習者はグループワークによる本学習活動を通して、多面的・創造的・立体的に多義動詞を学んだと考えられる。 |
要旨(1000字以内) |
日本語学習者が多義動詞を学習する際に、辞書の解釈や教師の説明に依存する従来のやり方から脱却して、既有能力を発揮し能動的に学んでいけないかを考えて、「掛ける」を例にして新しい学習デザインを設けた。T、「掛ける」の既習用例を想起する、U、例文15個をいくつかのグループに分類する、V、イメージと全体的理解をまとめる、という三ステップを通して、TとUを個人ワークの次にグループワーク、Vをグループワークの形で活動を行った。対象者は中国の日本語学科三年生11名、時間は1時間40分である。 語彙学習における初めてのグループワーク活動として、その可能性と今後の実践に結びつく示唆を得るため、二つの研究課題を設定した。課題1:グループワークを通して多義動詞を学ぶ本活動の実態はどのようなものか。1−1.学習者は「掛ける」のどの点に注目してやり取りを行っているか。1−2.グループの協同的な理解構築にどのようなパターンがあるか。1−3.「掛けるに対する」グループ全体の意味理解はどのように変化するか。課題2.学習者が本学習活動に対してどのように受け止めるか。 活動中のやり取りの文字起こし資料を用いて課題1を分析し、活動後の振り返りシート及びフォローアップインタビューを用いて課題2を分析した。その結果以下のようなことが分かった。学習者が中国語での意味、格助詞と自他性、漢字、動作の動き、動作のもたらす変化、動詞が使われる状況に注目して、自分の既有知識と生活体験、認知能力を生かして「掛ける」の意味を吟味・理解していることがわかった。また、仲間との対話によってグループ全体の理解が深化して、「掛ける」に対する意味理解は中国語の訳語に依拠した限られたものから、まとまりを持つ全体的な理解に形成していったことがわかった。更に、学習者は本学習活動を好意的に受け止めていることも伺えた。学習者はグループワークによる本学習活動を通して、多面的・創造的・立体的に多義動詞を学んだと考えられる。 日本語教育への示唆として、多義動詞の意味理解を能動的に探ってもらうこと、グループワークを設けること、既有能力を生かせるデザインを設けることが必要だと言える。今後の課題として、違う多義動詞を用いて数回にわたって活動を行うこと、学習者が活動中に得た知見や方略を今後どう生かすかを明らかにすること、中級学習者を対象に実践することが必要だと考える。 |
最終更新日 2011年4月1日 |