氏名 |
加藤 直子 |
修了年度 |
2010年度(2011年1月提出) |
修士論文題目 |
使用基盤モデルの観点からの日本語母語習得研究 |
要旨(500字以内) |
第一言語としての日本語習得は、使用基盤モデルの母語習得過程で示される発達段階を経ているのかを日本語L1幼児(生後から2歳1ヶ月)1名の事例研究を行い検証した。
研究課題と研究結果は以下の通りである。 研究課題:日本語L1幼児の2;1以前の発話データは、一語文(1;0前後)⇒二語文(1;6前後)⇒ピボットスキーマ (1;6前後)⇒アイテムベース構文(2;0前後)という使用基盤モデルの母語習得段階を経ているのか 研究の結果:日本語L1幼児の第一言語としての日本語習得において、使用基盤モデルの母語習得過程で示された発達段階(一語文⇒二語文⇒ピボットスキーマ⇒アイテムベース構文)を経ていることが確認された。また、第一言語としての日本語習得過程の特徴として、@9ヶ月革命の後、一語文を産出し始め、一語文から二語文への発達があり、二語文には2つのタイプ(語+語)と(語+助詞)がある。A二語文の産出を繰り返す中でスキーマ化が起き、ピボットスキーマが生成される。B2;0前後で格助詞と動詞を共起する多語文を産出する移行期を経て、アイテムベース構文の段階に到達するという3点が示唆された。 |
要旨(1000字以内) |
日本語教育研究の分野では、これまで様々な習得研究が行われてきたが、第二言語としての日本語習得を説明し得る理論的基盤が見いだされていないという現状がある。そこで、近年注目を集める認知言語学的観点である使用基盤モデルを、第二言語としての日本語教育に将来応用すべく、まずは、第一言語としての日本語習得は、使用基盤モデルの母語習得過程で示される発達段階を経ているのかを日本語L1幼児(生後から2歳1ヶ月)1名の事例研究を行い検証した。 研究課題と研究結果は以下の通りである。 研究課題:日本語L1幼児の2;1以前の発話データは、一語文(1;0前後)⇒二語文(1;6前後)⇒ピボットスキーマ (1;6前後)⇒アイテムベース構文(2;0前後)という使用基盤モデルの母語習得段階を経ているのか 小課題a.日本語L1幼児は、1;0前後で一語文を産出しているか。 小課題b.日本語L1幼児は、1;6前後で二語文を産出しているか。それはどのようなプロセスを経ているのか。 小課題c.日本語L1幼児は、1;6前後でピボットスキーマを生成しているか。それはどのようなプロセスを経ているのか。 小課題d.日本語L1幼児は、2;0前後でアイテムベース構文を産出しているか。それはどのようなプロセスを経ているのか。 研究の結果、以下のことが明らかになった。 日本語L1幼児の第一言語としての日本語習得において、使用基盤モデルの母語習得過程で示された発達段階(一語文⇒二語文⇒ピボットスキーマ⇒アイテムベース構文)を経ていることが確認された。 それ以外にも、第一言語としての日本語習得過程の特徴として、以下の3点が示唆された。第1に、第一言語としての日本語習得の場合、二語文には「語+語」と「語+助詞」の2つのタイプが存在すること。第2に、第一言語としての日本語習得過程において生成されるピボットスキーマは、単語のみならず、助詞をピボットとするものが存在すること。第3に、2;0前後に格助詞「を」「が」「で」「に」と動詞が共起する多語文が産出されるようになるが、依然として格助詞をピボットスキーマ的に用いており、格助詞の誤用が生じうる。この時期をピボットスキーマからアイテムベース構文への移行期と考え、動詞に合わせて格助詞を使用し、格助詞の誤用が起きないアイテムベース構文期へと進むことが示唆された。 |
最終更新日 2011年4月1日 |