氏名

白 春花

修了年度

2010年度(2011年1月提出)

修士論文題目

日本語における文理解時の格標識・語順手がかり使用
−モンゴル語‐中国語バイリンガル及びモノリンガル日本語学習者を対象に−

要旨

(500字以内)

 本研究は、類型論の視点から、文理解の手がかり使用におけるバイリンガルの学習者とモノリンガルの学習者の相違を明確にすることを目的とし、モンゴル語母語話者のモノリンガル、中国語母語話者のモノリンガル、モンゴル語・中国語バイリンガルの日本語の文理解時の格助詞手がかり及び語順手がかり使用を調べた。その結果、モノリンガルのモンゴル語話者は格助詞に頼っていることが分かり、中国語話者は格助詞、語順手がかり両方に頼っていることが確認された。同時に、モノリンガル学習者の場合、母語によって手がかり使用が異なることがわかった。また、バイリンガルの学習者が既習両言語における全ての手がかりを活性化させていることが明らかになった。そのことから類型論的に近い言語ほど、手がかり転移が起こりやすいことが言える。また、類型論的に遠い言語の場合、ターゲット言語における手がかり形成が行われることが示唆された。更に、バイリンガルの場合、モノリンガルと異なる操作を行っていることが明確になった。

要旨

(1000字以内)

 本研究は、類型論の視点から、文理解の手がかり使用におけるバイリンガルの学習者とモノリンガルの学習者の相違を明確にすることを目的とし、Bates & MacWhinney の競合モデル(Competition model)に基づき、モンゴル語母語話者のモノリンガル、中国語母語話者のモノリンガル、モンゴル語・中国語バイリンガルの日本語の文理解時の格助詞手がかり及び語順手がかり使用を調べた。研究課題は@母語が日本語と類型論的に同じ言語のモノリンガルと、類型論的に異なる言語のモノリンガルでは、日本語の文理解において用いる手がかりが異なるか;A日本語と類型論的に同じ言語と異なる言語の両方を母語とするバイリンガルは、母語が日本語と類型論的に同じ言語のモノリンガル、及び、類型論的に異なる言語のモノリンガルと日本語の文理解において用いる手がかりが異なるかである。
 実験では、主に「うまが うしを みた」のような二つの名詞、一つの動詞から成る語列を104文集め、SuperLab4.0で作成し、ノート型パソコンを用いて視覚提示をした。実験協力者にできれば素早く、正確に語列の行為者(Agent)を選択するよう指示し、その行為者の選択における反応時間を指標とした。分析では実験協力者の言語を被験者間要因(3水準)、実験で使用する文の種類―格ありSOV 、格ありSVO、格ありOSV、格ありOVS、格なしSOV、格なしSVO(以下それぞれ[格SOV]、[格SVO]、[格OSV]、[格OVS]、[SOV]、[SVO])―を被験者内要因(6水準)とする混合計画をデザインし、3×6の分散分析を行った。
 その結果、モノリンガルのMJは格助詞に頼っていることが分かり、CJは格助詞、語順手がかり両方に頼っていることが確認された。同時に、モノリンガル学習者の場合、母語によって手がかり使用が異なることがわかった。また、バイリンガルの学習者が既習両言語における全ての手がかりを活性化させていることが明らかになった。
 この結果から類型論的に近い言語ほど、手がかり転移が起こりやすいことが言える。また、類型論的に遠い言語の場合、ターゲット言語における手がかり形成が行われることが示唆された。更に、バイリンガルの場合、モノリンガルと異なる操作を行っていることが明確になった。
最終更新日 2011年4月1日