氏名 |
アリアンティ・ビシアティ |
修了年度 |
2010年度(2011年1月提出) |
修士論文題目 |
内容重視のグループリーディング −インドネシア人の日本語学習者の場合− |
要旨(500字以内) |
本研究は母語を使用しながらオーセンティックな日本語の教材を使った内容重視のグループリーディングを行い、非漢字圏の中級レベルの日本語学習者はオーセンティックなテキストの大意をとることができるか、そして内容に関わって、どのぐらい考えが深められ、さらに問題解決に向けての行動にまでつなげていけるかを検討した。 その結果、次のことが分かった。学習者はオーセンティックな読み物を読むことができる。グループで読むことで、学習者はお互いをリソースとして使用しあうことができ、読みが深化してきた。また、母語使用も理解の深化に大きな役割を持っていることも示された。グループのやりとりで母語を使用することで、学習者の既有能力を発揮しやすいし、学習者の間で自由に質疑応答をしたり、意見を言ったり、議論したりすることができたため、読みの理解がますます深まっていった。また、テキストの理解に基づいて、さらに話し合うことで、学習者がテキストのテーマとしての社会問題を深く考え、その解決まで考えることができるようになった。学習者の理解に関しては、「権威的な言葉」での理解ではなく、「内的説得力がある言葉」での理解であることが推察された。 |
要旨(1000字以内) |
インドネシアの大学の日本語学科の学生にとって、卒業論文を執筆することは卒業するために必要なことである。良い論文を書くために必要な読む技能の養成においては、読んで情報をそのまま受け取るというのではなく、情報を自分の既有知識と結びつけて考え自分なりの解釈を創造する力を養うことを考えなければならないと筆者は考える。このような力を養成するには日本語の中級レベルから行わなければならない。しかし、日本語で書かれてある本や新聞、資料などのオーセンティックな読み物は非漢字圏の中級レベルの学習者にとっては非常に難しい。そのために、本研究はインドネシア人中級日本語学習者を対象として、オーセンティックな教材を使った読解授業を行い、そこからデータを収集し、検討することで、非漢字圏出身者向けの新たな読解教育の開発に示唆を得ることを目指す。 上記の力を養成するために、対話的問題提起学習、ピア・リーディング、日本語学習と母語使用の関係に注目した先行研究からヒントを得て、読解授業のデザインをし、授業を行った。 研究課題としては@「オーセンティックなテキストを読んで、その大意をとることができたか。どのように大意がとれたか」、A「思考は深まったか。その思考は問題解決に向かっていたか」である。 学習者の活動中の文字化されたやりとりから、次のことが示された。中級レベルの日本語学習者にも、以下のような工夫した点、すなわち、@読解活動を対話的問題提起学習のステップを踏んで進める、A仲間と一緒に読む、Bやりとりの際、母語を使用するCテキストのテーマは学習者の身近なものとし、事前課題としてテーマに関連する母語で書かれた読み物を読んでおくを設定した。その結果、自分のレベルより高い日本語のレベルのオーセンティックな読み物を読むことができる。グループで読むことで、舘岡(2000)が報告したように学習者はお互いをリソースとして使用しあうことができ、読みが深化してきた。読みの深化の要因はグループで読むことにあるだけではなく、母語の使用も関わっていることが分かった。楊峻(2010)の研究結果に見られるように、グループのやりとりで母語を使用することで、学習者の既有能力を発揮しやすいし、学習者の間で自由に質疑応答をしたり、意見を言ったり、議論したりすることができたため、読みの理解がますます深まっていった。また、テキストの理解に基づいて、さらに話し合うことで、学習者が社会問題を深く考え、その解決まで考えることができた。学習者の理解に関しては、「権威的の言葉」での理解ではなく、「内的説得力がある言葉」での理解であることが推察された。 |
最終更新日 2011年4月1日 |