氏名 |
グエン・ヴァン・アイン |
修了年度 |
2010年度(2011年1月提出) |
修士論文題目 |
ベトナム語を母語とする日本語学習者の場所を表す格助詞「に」「で」「を」の習得 |
要旨(500字以内) |
場所を表す格助詞「に」「で」「を」については、ベトナム語を母語とする日本語学習者を対象にした研究は管見の限りではない。本研究は、格助詞を持たないベトナム語を母語とする日本語学習者がどのように場所を表す「に」「で」「を」を使い分けているのか、それは学習レベルでどのように変化するかを横断的調査によって明らかにした。 その結果は、レベルが低い学習者は前接する名詞に着目し、その名詞と格助詞の固まりからピボットスキーマを使用して、語レベルで文を処理することが多い。一方、レベルが高い学習者にはピボットスキーマの使用はあまり見られず、格助詞と動詞の関係を統語的に結び付け、アイテムベース構文を使用し、文レベルで文を処理することがよく見られた。また、レベルが低い学習者も高い学習者も「格助詞+動詞」の固まりで格助詞を選択する傾向が見られた。このように、格助詞を選択する際に用いられるストラテジーから学習者の格助詞の処理プロセスは以下のように推測される。 ピボットスキーマ → 格助詞+動詞の固まり → アイテムベース構文 |
要旨(1000字以内) |
ベトナム語は中国語などと同様、孤立語であり、語順により格を表し、日本語のように格助詞を用いないことから、ベトナム人日本語学習者にとっても日本語の格助詞の習得は困難な項目の一つとなっていることが挙げられる。 場所を表す格助詞「に」「で」「を」については、これまで多くの研究がなされてきたが、中国人学習者および韓国人学習者を対象にした研究がその大部分を占めており、ベトナム語を母語とする日本語学習者を対象にした研究は管見の限りではない。また、これまでの研究は、学習者の各レベルで「に」と「で」の選択ストラテジーの検証を行ったものであるが、レベル別の結果を報告したに留まり、それぞれのレベルで用いられるストラテジーの相違について触れた研究はなかった。学習者にとって習得困難な文法項目である場所格に関する選択ストラテジーについて、日本語能力のレベルが上がるにつれて、どのように変化しているかを明らかにする必要があると考える。そこで、本研究は、格助詞を持たないベトナム語を母語とする日本語学習者がどのように場所を表す「に」「で」「を」を使い分けているのか、それは学習レベルでどのように変化するかを横断的調査によって明らかにした。 ベトナム語を母語とする日本語学習者は、レベルによって、違うストラテジーを使っているが、両群で共通したストラテジーも使われていることも分かった。レベルが低い学習者は前接する名詞に着目し、その名詞と格助詞の固まりからピボットスキーマを使用して、語レベルで文を処理することが多い。一方、レベルが高い学習者にはピボットスキーマの使用はあまり見られず、格助詞と動詞の関係を統語的に結び付け、アイテムべース構文を使用し、文レベルで文を処理することがよく見られた。また、名詞の関係のピボットスキーマと動詞と統語的な関係のアイテムベース以外に、レベルが低い学習者も高い学習者も「格助詞+動詞」の固まりで格助詞を選択する傾向が見られた。この固まりはアイテムベース構文の前の段階だと考えられる。 本研究は場所を表す「に」「で」「を」の用法を中心に調査を行ったが、学習者が使用可能な様々なストラテジーから格助詞の習得過程、そして格助詞全般の習得を解明するため、「に」「で」「を」の他の用法(対象格など)、「に」「で」「を」の他の用法と共通した用法を持つ他の格助詞に広げる必要がある。 |
最終更新日 2011年4月1日 |