修士論文要旨 |
氏名 |
高岸 美代子 |
修了年度 |
2009年度(2010年1月提出) |
修士論文題目 |
「体言止め」に見る女子高校生のコミュニケーション −ターン交替と機能を通して− |
要旨(300字以内) |
様々なコミュニケーションツールが発達している現代にあって、我が国では逆に若者のコミュニケーション力の欠如が叫ばれる今日、本研究では、女子高校生(15組)を対象に使用頻度の高い発話末の「体言止め」に着目して分析考察した。ターン交替形式(@自己選択 A他者選択 B取得放棄 C再保持 D取得再放棄 E最終自己選択)で分類し、その機能を考察した結果、文脈判断を必要とする名詞一語文の多用、短いターン交替、話題転換から内向き表面的パッチワーク的会話構造が明らかになった。グローバル化した世界に逆行する日本語母語話者のコミュニケーションのあり方については、今後さらに実態を把握し、検証していく必要がある。 |
要旨(1000字以内) |
日本国内では、社会のしくみが大きく変わり、様々な分野で日本人同士のコミュニケーション能力の向上が叫ばれ、各種セミナーは大はやり、今やコミュニケーションは現代社会のキーワードとさえなっている。ところが、コミュニケーションツールを駆使しているかに見える若い人達の言語力不足がコミュニケーションに関しては、新たな社会問題になっている。このように我が国では外国人とのコミュニケーション以前に、母語話者間でコミュニケーション障害を引き起こしている実態もある。 そこで、本研究では、女子高校生の親しい友人同士の話し言葉の中で多用されている「体言止め」使用のコミュニケーションの実態を分析考察することによって、ますますグローバル化していくであろうこれからの時代を担う日本人のコミュニケーションのあり方について考えるきっかけにしたい。 女子高校生の「体言止め」発話を、大浜(2006)の分析の枠組みを参考にして6つのターン交替形式(@自己選択 A他者選択 B取得放棄 C再保持 D取得再放棄 E最終自己選択)に分類し、量的分析の後、質的分析をして、機能や会話の構造について考察した。尚、対照資料として成人女性の「体言止め」発話も同様にデータ化して使用した。 結果、女子高校生の「体言止め」会話は、成人女性と同じく先の分類の中では、@自己選択が多く、問いかけや情報提供の機能をもっていることがわかった。が、成人女性に言いさし文系の「体言止め」が多いのに比して、女子高校生の「体言止め」は名詞一語文の使用とその「繰り返し」の多用に特徴がある。ターン交替形式では「繰り返し」は「あいづち」と同じB取得放棄に分類されるが、「あいづち」的会話にはならない。「あいづち」的会話が話し手、聞き手の役割分担が明確で、いわゆる従来型日本語会話に多く見られる話し手主導の物語的共話型会話構造になりがちであるのに比べて、「体言止め」会話は「あいづち」的会話とは逆に話者交替が早く、話題も連想ゲームのように次々と変わり、短い発話や結束性のない話題がつぎはぎされて、パッチワーク型会話構造になることがわかった。できるだけ短い文や言葉にして多くの情報を脈絡なく伝えるメール型会話といえるかもしれない。 日本語教育においては何かとモデル化されやすい日本人母語話者自身の会話構造の変化に関しては今後も研究していく必要がある。 |
最終更新日 2011年3月31日 |