修士論文要旨 |
氏名 |
白田 千晶 |
修了年度 |
2009年度(2010年1月提出) |
修士論文題目 |
日本人配偶者を持つある在日外国人女性の文化理論 −質的研究としてのTAEを用いた多文化共生への取り組み− |
要旨(300字以内) |
本研究では、在日外国人女性Jさんに焦点をあて、彼女が日本に来日し経験したことからどのような考えや価値観を創り上げてきたのか、Jさんの持つ個人の文化理論を可視化させることを目的とし、TAEを用いて分析した。研究課題2では、理論をJさんと共有することによって、Jさんの理論がどのように再構築されていくかを明らかにした。 その結果、@郷に入れば従いながらも、ストレートに生きる、A時と場合に応じて臨機応変に対応する、B何事にも積極的に参加し、人と関わるC女性として仕事を持ち、自立して生きる、の4つがJさんの主な理論の骨格となっていること、またこれら文化理論は様々な経験を通して長期的に変化していく大きなものもあれば、他者との対話によって、これまでよりはっきりとしたものに変化したり、深化したりすることが分かった。 |
要旨(1000字以内) |
本研究では、日本人配偶者を持つ在日外国人女性Jさんに焦点をあて、彼女が日本に来日し経験したことからどのような思考や価値観を創り上げてきたのか、彼女の持つ世界観を質的に分析し、多文化共生の示唆を得た。研究課題1では、Jさんが異文化の中での生活、家庭や仕事においてをどのように体験し、どのような価値観や考えを築いているのか、彼女が持つ個人の文化理論を可視化させることを目的とし、TAEを用いて分析した。さらに、研究課題2では、構造化させた理論をJさんと共有することによって、Jさんの理論がどのように再構築されていくかを明らかにした。文化理論とは、普段は意識されない暗黙知であるが、人間が生きる上で必要な構造化されたシステムであり、TAEの開発者であるジェンドリンの哲学理論を背景として定義づけたものである。 その結果、日本に住むJさんの中には、「精神的な安定を得られる」「弱い自分を分かってもらえる」「頑張っている自分、能力、強みを認めてもらう」「無理している・苦しんでいる」の主な4つの側面があること、そしてそれらの中には、職場や家庭、地域コミュニティーなどの居場所が存在し、それぞれが車輪のように作動し、1つが変われば、もう一つも変化する、というように相互に作用し合っていることが分かった。また、Jさんの理論は、「居場所」がベースとなっており、その中に次のようなパターンを見出すことができる。@郷に入れば従いながらも、ストレートに生きる、A時と場合に応じて臨機応変に対応する、B何事にも積極的に参加し、人と関わるC女性として仕事を持ち、自立して生きる、この4つが主な理論の骨格となり、ある部分では、郷に従いながらも譲れない部分は、日本に合わせるのではなく、臨機応変に対応しようとしていることが明らかになった。 研究課題2では、最終的に分析者が構築したJさんの文化理論と作成の過程をJさんに見せ、共有するという試みを行った。その結果、Jさんの理論を理論作成者(分析者)と一緒に検討することによって、深く内省し、自分の体験過程への意味づけがさらに追加され、それを言語化することで、Jさんの中でよりはっきりとしたものに変化していったことが分かった。本研究から、文化理論は誰もが持っているものであり、様々な経験を通して長期的に変化していく大きなものもあれば、他者との対話によって、これまでよりはっきりとしたものに変化したり、深化したりすることが分かった。文化理論は、経験に応じて変化し、日々の生活の中で再構築を繰り返していること、そして、文化理論の構築には周りの環境が大きく影響していることが明らかになった。 |
最終更新日 2011年4月1日 |