修士論文要旨


氏名

酒井 彩

修了年度

2009年度(2010年1月提出)

修士論文題目

日本語学校生の進路選択自己効力と進路サポートの関連

要旨

(300字以内)

 本研究は日本語学校生の進路選択自己効力と学校関係者からの進路サポートの関連を明らかにすることを目的とし、日本語学校生419名(中国出身207名、韓国出身212名)を対象に質問紙調査を行った。
 その結果、日本語学校生は〈自己認識〉、〈情報収集〉、〈目標選択〉、〈計画遂行〉という進路選択自己効力をもち、〈心理・指導サポート〉、〈周辺的情報サポート〉、〈基本的情報サポート〉、〈機会提供サポート〉という進路サポートを受け取っていると認識していることが明らかになった。さらに、重回帰分析を行ったところ、中国人日本語学校生の〈計画遂行〉に〈心理・指導サポート〉、日本語能力が正の影響を及ぼしていた。また、韓国人日本語学校生の〈目標選択〉に〈基本的情報サポート〉、将来の明確さが正の影響を及ぼしていた。

要旨

(1000字以内)

 長年、日本語学校は進学予備教育機関としての役割が期待されてきた。しかし、昨今は進学とは限らない多様な進路選択がみられるようになり、それを支える進路サポートも変容が求められている。日本語学校がいくら進路サポートを提供しても、それを日本語学校生が活用していなければ、意味がない。また、日本語学校生自身にいくら進路選択自己効力があっても、それを自身で意識していなかったり、有効に発揮できていなかったりすれば、進路選択に活用できない。
そこで、本研究はこのような現状を踏まえ、日本語学校生のよりよい進路選択に向けて、進路選択自己効力と進路サポートの関連を明らかにすることを目的とし、日本語学校生419名(中国出身207名、韓国出身212名)を対象に質問紙調査を行い、分析をした。
 研究課題1では日本語学校生の進路選択自己効力について因子分析を行い、〈自己認識〉、〈情報収集〉、〈目標選択〉、〈計画遂行〉の4因子が抽出された。
 研究課題 2では日本語学校生が学校関係者から受け取った進路サポートについて因子分析を行い、〈心理・指導サポート〉、〈周辺的情報サポート〉、〈基本的情報サポート〉、〈機会提供サポート〉の4因子が抽出された。
 研究課題3では進路選択自己効力、進路サポート、デモグラフィック要因に相関関係がみら れたことから、進路選択自己効力に影響を及ぼす要因を探るため、出身国別に重回帰分析を行ったところ、主に以下のことが明らかになった。
 中国人日本語学校生の〈自己認識〉を規定する要因として、〈心理・指導サポート〉、将来の明確さ、日本語能力が挙げられ、〈計画遂行〉を規定する要因として、〈心理・指導サポート〉と日本語能力が挙げられる。中国人日本語学校生は学歴社会を背景とした両親の影響を受けていることから、両親の代わりとなるサポートを求めている可能性がある。
 また、韓国人日本語学校生の〈情報収集〉を規定する要因として、〈基本的情報サポート〉、将来の明確さ、日本語能力が挙げられ、〈目標選択〉を規定する要因として、〈基本的情報サポート〉と将来の明確さが挙げられる。韓国人日本語学校生は将来が明確であることから、進路選択をする手段として、進路サポートを必要としている可能性がある。
 本研究の結果は文化背景を考慮した進路サポートを行うことで、日本語学校生をサポートの受け手として捉えるだけではなく、進路選択自己効力が活用できる可能性を示唆した。
最終更新日 2011年4月1日