修士論文要旨


氏名

長戸 裕香

修了年度

2009年度(2010年1月提出)

修士論文題目

日本人学生と中国人学生における友人同士の対人行動と文化的自己観との関連

要旨

(300字以内)

 本研究では、日本人学生と中国人学生における友人同士の対人行動と文化的自己観との関連を明らかにすることを目的とした。
 日本人学生は「相手の好みや反応重視の贈答」を規定する要因として「自己意見の保持」と「他者への親和・順応」が影響を及ぼしていること、「無難性重視の贈答」、「好意的感情起因の奢り」を規定する要因としてそれぞれ「他者への親和・順応」が影響を及ぼしていることが示された。また、中国人学生は「相手の好みや反応重視の贈答」を規定する要因として「他者への親和・順応」が影響を及ぼしていること、「好意的感情起因の奢り」を規定する要因として「自己判断の確信」が影響を及ぼしていることが示された。

要旨

(1000字以内)

 日本における留学生数は年々増加しており、大学での日本人学生と留学生の多数を占めている中国人学生との交流機会の増加に伴い、異なる文化的背景によりお互いの行動に対し違和感が生じる可能性が推測される。このため本研究では、日本人学生と中国人学生における友人同士の対人行動と文化的自己観との関連を明らかすることを目的とし、日本人学生148名、中国人学生97名を対象に質問紙調査を行い、統計的手法を用いて分析した。  研究課題1では、文化的自己観の因子構造を明らかにし、国籍による相違があるかを検討した。因子分析の結果、「他者評価の意識」、「自己判断の確信」、「自己意見の保持」、「他者への親和・順応」の4因子が抽出された。また、日中による有意差が見られたのは、「自己判断の確信」と「自己意見の保持」であり、ともに中国人学生の方が高いことが示された。
 研究課題2では、友人同士の対人行動の因子構造を明らかにし、国籍による相違があるかを検討した。因子分析の結果、「抵抗のない貸借」、「相手の好みや反応重視の贈答」、「双方向性重視の返報」、「無難性重視の贈答」、「好意的感情起因の奢り」、「規範起因の奢り」、「割り勘」、「個人的空間での相手への気遣い」の8因子が抽出された。また、日中による有意差のうち、日本人学生の方が高かったのは、「無難性重視の贈答」と「割り勘」であった。一方、中国人学生の方が高かったのは、「抵抗のない貸借」、「相手の好みや反応重視の贈答」、「規範起因の奢り」であった。
 研究課題3では、友人同士の対人行動と文化的自己観との関連を検討するため、日本人学生と中国人学生に対し、重回帰分析を行った。その結果、日本人学生は、「相手の好みや反応重視の贈答」を規定する要因として「自己意見の保持」と「他者への親和・順応」が影響を及ぼしていた。また、「無難性重視の贈答」と「好意的感情起因の奢り」を規定する要因としてそれぞれ「他者への親和・順応」が影響を及ぼしていた。一方、中国人学生は、「相手の好みや反応重視の贈答」を規定する要因として「他者への親和・順応」が影響を及ぼしていた。また、「好意的感情起因の奢り」を規定する要因として「自己判断の確信」が影響を及ぼしていた。
 以上のことから、日本人学生と中国人学生の双方に対し、異文化間の理解や交流促進、教育的介入のための情報提供が可能となる一定の示唆が得られた。
最終更新日 2011年4月1日