修士論文要旨 |
氏名 |
金 秀惠 |
修了年度 |
2009年度(2010年1月提出) |
修士論文題目 |
韓国語を母語とする日本語学習者の助数詞「本」の意味構造とその習得 |
要旨(300字以内) |
本研究では、日本語母語話者と韓国人日本語学習者が持つ助数詞「本」の意味構造を明らかにし、両者の意味カテゴリーを対照することで韓国人日本語学習者が構築する意味構造は日本語母語話者のそれとどのような相違があるかを明らかにすることを目的とした。 調査の結果、日本語母語話者と韓国人日本語学習者持つ助数詞「本」の意味構造は、「一次元的に細長い」である物に対しては違いがないが、形状が細長くないものや抽象物についてはかなり違いがあることが分かった。そして、韓国人日本語学習者は助数詞「本」について「細長い」という狭い範囲でしか捉えていないが、日本語母語話者はより広い範囲で捉えていることが明らかになった。 |
要旨(1000字以内) |
日本語には「個、本、冊、枚」のような助数詞が存在し、数えるモノの種類によって使い分けられている。助数詞「本」は他の助数詞に比べて使用頻度が高く、幅広い意味で使用される。韓国人日本語学習者は「本」には多様な意味があり、数えるモノの代表的なイメージは「細長いもの」であると教わっているが、「本」で数えるものの中には電話や論文などもあり、これらは必ずしも形状が細長くなく、何をもって「細長い」とするかが分かりにくい。そのため学習者の日本語助数詞「本」の習得において混乱が見うけられる。 本研究では、1) 助数詞「本」の使用は日本語母語話者と韓国人日本語学習者で違いがあるか 2) 助数詞「本」の意味構造は日本語母語話者と韓国人日本語学習者で違いがあるかという2つの点を明らかすることを目的とし、調査を行った。結果は以下のようになった。 研究課題1.1では、日本語母語話者の助数詞「本」の捉え方について調査した結果、「細長い物体」を数える用法ではほとんど揺れもなく確立しているようであるが、空き缶、タイヤ、抽象物を数える助数詞「本」の用法には日本語母語話者の間でも揺れがあることが分かった。研究課題1.2では、韓国人日本語学習者と日本語母語話者が持つ助数詞「本」の知識は具体物を数える用法の中で一次元的に細長い物、管状になっている物は似ているが、環状になって物、抽象物に対してはかなり異なっていることが分かった。研究課題1.3では、韓国人日本語学習者は学習の進展とともに助数詞「本」の知識は日本語母語話者に近づいていることが分かった。 研究課題2.1では、日本語母語話者と韓国人日本語学習の助数詞「本」のプロトタイプは「形状の細長い物」である点は共通していたが、韓国人日本語学習者の場合、想起された例文が日本語母語話者に比べるとその範囲が狭く、具体物に止まっていることが分かった。研究課題2.2では、助数詞「本」のカテゴリー構造は、日本語母語話者と韓国人日本語学習者の間では異なっていることが分かった。日本語母語話者の場合、5つの基準でカテゴリーを分けていると考えられるが、韓国人日本語学習者の場合、3つの基準でカテゴリーを分けていて、抽象物はどのような基準でカテゴリー化されているか不明であった。また、韓国人日本語学習は形状のみに注目してカテゴリー化する傾向があり、日本語母語話者に比べてカテゴリー範囲がまとまっていないことが分かった。 以上の通り、本研究では、日本語母語話者と韓国人日本語学習者が持つ助数詞「本」の意味構造の違いを明らかにすることができたが、今後の課題としてそのような相違が生まれた原因を探る必要があると考えられる。 |
最終更新日 2011年4月1日 |