修士論文要旨


氏名

黄 美蘭

修了年度

2009年度(2010年1月提出)

修士論文題目

日本語学校に通う中国人学生の被差別感と原因帰属との関連

要旨

(300字以内)

 本研究は、主に、中国人日本語学校生がアルバイト先で感じる被差別感事例の内容、原因帰属及びその事例による日本・日本人に対してのイメージの変化をKJ法でまとめ、分析を行った。
 その結果、日本語能力不足によるトラブルの内容では、差別経験の原因を自分の日本語能力に帰属させ、その場合、日本・日本人に対する良いイメージは、事例発生後も変わることがなかった。また、対応不能の内容では、差別経験の原因を日本人の個人に帰属させ、さらに、個人的な話ができる友人の有無によって、日本・日本人に対してのイメージはかなり異なっていた。一方で、国籍への否定の内容では、原因を日本人集団に帰属させ、その時、日本・日本人に対してのイメージはマイナスイメージへと変化する傾向が見られた。

要旨

(1000字以内)

 日本における留学生及び就学生は増加傾向を示している。私費留学生の前段階である日本語学校生は、習慣や文化の違いにより、日本人との接触の中で偏見・差別を感じることも少なくない。その中で、日本語学校生が日本人から被差別感を感じた時、その原因を帰属させるところの違いにより、日本・日本人に対してのイメージが異なることも想像に難くない。本研究では、日本語学校生の多数を占める中国人日本語学校生を対象に、自由記述の質問票調査を用いてKJ法で分析を試みた。主な結果は以下の通りである。
 研究課題1では、中国人日本語学校生は【国籍】【言語】【日本人の排他的態度・行動】『対応不能』『約束不遵守』『日本の接客習慣によるトラブル』等の内容で被差別感を感じていることが示された。
 研究課題2では、中国人日本語学校生はアルバイト先で【国籍】【言語】『日本人との不平等な扱い』『対応不能』『約束不遵守』『日本の接客習慣によるトラブル』等の内容で被差別感を感じていて、アルバイト先で感じる被差別感の原因を【外国人/中国人の個人】【外国人/中国人の集団】【日本人の個人】【日本人の集団】『文化要因』に帰属させることが示された。
研究課題3では、アルバイト先での被差別感の事例が起きる前と起きた後の中国人日本語学校生が持つ日本・日本人のイメージを明らかにした。事例発生前は全体的に『プラスイメージ』の傾向が見られたが、事例発生後は『マイナスイメージへの変化』『良い印象の維持』『良い印象の一部修正』『新しい認識の付加』の傾向が見られた。
 研究課題4では、アルバイト先での被差別感の原因帰属と事例発生後の日本・日本人に対してのイメージとの関連を明らかにした。主に、原因を日本語能力不足に帰属させた場合は良い印象の維持の傾向が、日本人の個人に帰属させた場合は個人的な話ができる友人の有無によって日本・日本人に対してのイメージが異なっている傾向が見られた。
 研究課題5では、アルバイト先での被差別感の内容、原因帰属及び事例発生後の日本・日本人に対してのイメージとの関連を明らかにした。主に、日本語能力不足によるトラブルでは、原因を日本語能力不足に帰属させ、その場合、日本・日本人に対する良いイメージは、事例発生後も変わることがなかった。また、対応不能では、原因を日本人の個人に帰属させ、さらに個人的な話ができる友人がいる場合は、良い印象が一部修正される傾向が見られ、一方で、個人的な話ができる友人がいない場合はマイナスイメージを抱きやすい傾向が見られた。
最終更新日 2011年4月1日