修士論文要旨


氏名

朴 エスター

修了年度

2008年度(2009年1月提出)

修士論文題目

韓国における帰国生の学校生活のストレスと関連要因

要旨

(300字以内)

 昨今、韓国の経済成長と世界のグローバル化が進み親の海外赴任や留学のため、又は自らの留学のため出国する学齢期の子どもたちが著しく増加し、それに伴い帰国生の数も増えている。しかし、韓国では、帰国生を対象にした教育研究の数は僅かで、学校現場でその成果が十分に反映されているとは言い難く、同化と等しい意味での適応教育にその主眼が置かれている。そこで本研究は、韓国の帰国生が感じるストレスとそれに関連する要因を明らかにすることを目的とし、韓国の中学・高校に在籍する帰国生240名を対象に質問紙調査を実施し、統計的な分析を行った。主な結果として「教師との関係への落胆」と「現在の年齢」は、ストレスの「教師への不満」「規則遵守への強制」に有意に影響しているおり、「学校教育への落胆」はストレスの「教師への不満」「学業困難」に有意に影響していることが分かった。また、「友人関係への落胆」は、ストレスの「友人との不和」に有意に影響していることが明らかになった。

要旨

(1000字以内)

 昨今、韓国の経済成長と世界のグローバル化が進み親の海外赴任や留学のため成長期を海外で過ごす子どもや自らの留学のため出国する学齢期の子どもたちが著しく増加し、それに伴い帰国生の数も増えている。しかし、韓国では、帰国生を対象にした教育研究の数は僅かで、学校現場でその成果が十分に反映されているとは言い難く、同化と等しい意味での適応教育にその主眼が置かれていたのも事実である。そこで本研究では、韓国の帰国生が感じるストレスとそれに関連する要因を明らかにすることを目的とし、韓国の中学・高校に在籍する帰国生を対象に質問紙調査を行い、その結果に基づいて分析を行った。
 研究課題1では、帰国生の現在の学校生活のストレスについて因子分析を行い、「教師への不満」「学業困難」「友人との不和」「規則遵守への強制」の4因子が得られた。
 研究課題 2では、帰国生の帰国前後の韓国の学校に対する期待の落差度として「学校教育への落胆」「教師との関係への落胆」「友人関係への落胆」の3因子が抽出された。
 研究課題3では、帰国前後の韓国の学校に対する期待の落差度と属性は現在の学校生活のストレスにどのように影響するのかを検討した。そこで、現在の学校生活のストレスに影響する要因となる期待の落差度と属性について重回帰分析を行い、以下の結果が得られた。まず、「教師との関係への落胆」と「現在の年齢」は、ストレスの「教師への不満」「規則遵守への強制」に有意に影響していることが明らかになった。次に、「学校教育への落胆」はストレスの「教師への不満」「学業困難」に有意に影響していることが分かった。最後に、落差度の「友人関係への落胆」は、ストレスの「友人との不和」に有意に影響していることが分かった。
 このように、韓国の帰国生が感じるストレスが帰国生を取り巻く学校環境と帰国生の相互作用の結果であることから、帰国生のストレスを帰国生のみに焦点をあて解決しようとするこれまでの姿勢を再考し、彼らを受け入れる環境である学校側の変革をも視野に入れて検討する必要があると考えられる。つまり、帰国生の受け入れにおいて教師のキーパーソンとしての自覚と資質能力の育成、入試中心で画一主義的な学校教育目標の変容、友人関係への教育的介入、ストレスが発達段階に影響されることに対する学校側の認識が必要であることが示唆された。

最終更新日 2008年3月○日