修士論文要旨 |
氏名 |
蘇 位静 |
修了年度 |
2007年度(2008年1月提出) |
修士論文題目 |
言語少数派高校生は協働的読解活動にどう参加するか −言語能力差の有無に焦点を当てて− |
要旨(300字以内) |
本研究は、言語少数派高校生ペアの言語能力の差に着目し、協働的読解活動を行う際に、@各ペア間の言語能力の差の有無が、それぞれどのような参加の仕方が形成されるか、A参加の仕方の違いは当事者による活動の評価にどのような影響を与えるか、について当事者の内的視点から少数事例を通して検討することを目的とした。 |
要旨(1000字以内) |
本研究は、言語少数派高校生ペアの言語能力の差に着目し、協働的読解活動を行う際に、@各ペア間の言語能力の差の有無が、それぞれどのような参加の仕方が形成されるか、
A参加の仕方の違いは当事者による活動の評価にどのような影響を与えるか、について当事者の内的視点から少数事例を通して検討することを目的とした。 SCQRM(スクラム)をメタ理論とした修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した結果、言語能力に差がないペアでは、お互いに自分の日本語能力の弱さを認識していることから謙虚な態度になり、相手のことを受け入れようという姿勢から、相手への興味を持ち、内容理解や課題遂行の際に相手に貢献する、見直しや間違いを気づかせてくれるといった言動が見られ、活動においてお互いに【相互支援的関係な参加】の仕方が形成されていることが示唆された。この【相互支援的関係な参加】の仕方によって、1人では成し得なかった内容理解や課題遂行が達成できたことで、自信を持つようになった。また、相手への興味を持ち、相手を知ることで、お互いの友情が深まったのである。これらのことが結果的に当事者たちの【協働的読解活動に対するプラス評価】につながり、協働的学習に意義を見出すこととなった。一方、言語能力に差があるペアでは、【課題をこなすだけの参加】の仕方が形成されていることが示唆された。ペアを組んだ相手より言語能力が低い者は、謙虚な態度をとり、相手を受け入れようという姿勢があった。反対に、ペアを組んだ相手より言語能力が高い者は、この活動は自分のためにならず、負担になるものと感じ、その能力差を前向きに考えることができず、相手を受け入れようという気持ちが生まれにくい状態であった。しかし、一緒に活動をやらなければいけないという義務感から相手と課題をやることはやるようになった。また、活動を早く終わらせたいという気持ちから、課題を早く適当にこなすようにしたり、必要最小限の話をするようにしたり、相手の歩み寄る言動に気づかずに、何も感じないような言動を取り続けた。その結果、お互い【課題をこなすだけの参加】の仕方になっていた。こうした【課題をこなすだけの参加】の仕方から生まれる、時間がかかる上集中できない気持ちやもっとわかる人とやりたいという気持ちが、【協働的読解活動に対するマイナス評価】に働き、当事者たちは協働的学習に意義を見出すことができなかったことが示唆された。 |
最終更新日 2008年3月11日