修士論文要旨


氏名

朴 貞玉

修了年度

2007年度(2008年1月提出)

修士論文題目

韓国人父母の教育戦略
−日本の韓国学校の場合−

要旨

(300字以内)

 近年、グローバル化の進行により日本国内においても就労や定住のために来日する韓国人は数多く、中でも子どもと一緒に来日しているほとんどの韓国人父母たちの中心的関心事は「子供の教育をどうするのか」という問題である。そこで修士論文では、2007年6月現在、日本の韓国学校に子どもを通わせる韓国人父母369名に焦点を当てて、日本で子どもを育てながら子どもに対する教育をどのようにしていくかという戦略に着目し、その現状と課題を明らかにすることを目的とした。その目的を踏まえ、子どもを韓国学校に通わせる父母に、子どもに対する理想的な子供像と言語教育観の概念構造を明らかにし、理想的な子供像と言語教育観に影響を及ぼす要因とする父母の日本滞在歴と子供の学校での学年との関連及び理想的な子供像と言語教育観の両者の関連を、質問紙調査法を用い統計パッケージSPSSを用いて分析を行った。主な結果として、日本の韓国学校に子供を通わせる長期型の父母たちは、二文化の併存とバイリンガルを重視することが検討された。

要旨

(1000字以内)

 近年、グローバル化の進行により日本国内においても就労や定住のために来日する韓国人は数多く、中でも子どもと一緒に来日しているほとんどの韓国人父母たちの中心的関心事は「子供の教育をどうするのか」という問題である。そこで修士論文では、2007年6月現在、日本の韓国学校に子どもを通わせる韓国人父母369名に焦点を当てて、日本で子どもを育てながら子どもに対する教育をどのようにしていくかという戦略に着目し、その現状と課題を明らかにすることを目的とした。その目的を踏まえ、子どもを韓国学校に通わせる父母に、子どもに対する理想的な子供像と言語教育観の概念構造を明らかにし、理想的な子供像と言語教育観に影響を及ぼす要因とする父母の日本滞在歴と子供の学校での学年との関連及び理想的な子供像と言語教育観の両者の関係を質問紙調査法を用い、統計パッケージSPSSを用いて分析した。主な結果は以下の通りである。
 韓国学校に子供を通わせる父母たちの「理想的な子供像」の構造は、<二文化併存中心 主義><欧米文化中心主義><ホスト文化中心主義><自文化中心主義>の計4因子から構成され、<二文化併存中心主義>と<ホスト文化中心主義>では長期型の親に、<欧米文化中心主義>では中期型の親にそれぞれ日本滞在歴による有意差が検出され違いが認められた。また、<ホスト文化中心主義>では中学生をもつ親に学年による有意差が検出され差異が認められた。続いて、韓国学校に子供を通わせる父母たちの子どもに対する「言語教育観」の構造は、<トライリンガル重視><バイリンガル重視><韓国語重視><日本語重視>の計4因子から構成され、<バイリンガル重視>では長期型の親に日本滞在歴による有意差が検出され違いが認められた。最後に、理想的な子供像の言語教育観に及ぼす影響において、『トライリンガル重視』に影響を与えている要因は、正の『二文化併存中心主義』、『欧米文化中心主義』と負の『ホスト文化中心主義』であることと、『バイリンガル重視』に影響を与えている要因は、正の『二文化併存中心主義』であることが示された。また、『韓国語重視』に影響を与えている要因は、正の『ホスト文化中心主義』と『自文化中心主義』であることと、『日本語重視』に影響を与えている要因は、正の『ホスト文化中心主義』であることが示された。以上のように修士論文では、子どもを日本の韓国学校に通わせる父母たちの教育戦略として、子どもに対する理想像とそれによる言語教育観との関連性を明らかにした。また、それぞれの父母の属性と子どもの属性に分けての教育戦略の関連性も検討した。このように、父母の概念構造から教育戦略を探ることは今までない研究方法で、こういった研究結果は父母たちにとって有益な一つの情報として提供できると考えられる。

最終更新日 2008年3月11日