修士論文要旨 |
氏名 |
村中 雅子 |
修了年度 |
2007年度(2008年1月提出) |
修士論文題目 |
フランス在住日系国際家族の日本人母親と国際児は日本語継承をどのように意味づけているか |
要旨(300字以内) |
本研究はフランス在住日系国際家族の日本人母親と国際児を日本語継承の当事者とし、少数派言語としての日本語継承という行為を当事者がどのように意味づけているか、構造構成的質的研究法にもとづく修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて、当事者の内的視点から検討した。結果、日本語継承は日本人母親と国際児の愛着関係において重要な役割を果たしていることが示された。また両当事者ともに日本語を積極的に位置づけていることから、日本語の「主観的民族言語活力」の評価が高いことが示された。さらに日本語継承の意味づけは、他者や自己との社会的相互作用によって構成され続ける動的過程のなかにあることが示唆された。 |
要旨(1000字以内) |
本研究は、フランス在住日系国際家族の日本人母親と国際児を日本語継承の当事者とし、少数派言語としての日本語継承という行為を当事者がどのように意味づけているか、当事者の内的視点から検討するものである。その際に当事者間の相互作用と社会との相互作用に着目した。 対象者はフランス在住で国際児を日本語補習授業校に通わせている、あるいは通わせていた日仏国際家族の日本人母親6名とフランス生まれの国際児5名(7~10歳)である。半構造化インタビューを実施し、それを構造構成的質的研究法にもとづいた修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチで分析した。 その結果、日本人母親は日本語継承の意味として、@自分と子どもをつなぐ、A自分が親として子どもに与えてあげられるもの、Bバイリンガルというメリットの実現、C子どもの視野を広げる、の4点を見いだしていることがわかった。一方、国際児は、@母親との関係を強める、A将来の可能性を広げる、B忙しい日常での面倒な勉強、の3点を日本語継承の意味として見いだしていた。 両者を比較すると、日本人母親も国際児も日本語継承を母と子の関係をつなぐもの、強めるものとして捉えていると言える。このことから日本語や日本語継承が日本人母親と国際児との「愛着」関係において重要な役割を果たしていることがわかった。 意味を見いだす過程に注目すると、日本人母親も国際児も、相互に作用しながら、また社会からの影響を受けながら日本語継承の意味づけを行っていることが示された。つまり、当事者にとっての日本語継承の意味づけは、社会的相互作用によって構成され続ける動的過程のなかにあると言える。 また日本人母親も国際児も日本語を積極的に意味づけていることから、両者による日本語の「主観的民族言語活力」の評価が高いことがわかった。国際児は日本にルーツをもつ自分に対する社会からの評価と、日本語の「主観的民族言語活力」から、フランス人でもあり日本人でもある自分を、「複合的アイデンティティ」を持つ人間として自己認知し、それを肯定している。一方、日本人母親も「日本語の道具的側面」といった価値を見いだし、それが日本語継承の意味づけや意識的継承の実践に影響していることが示唆された。 このような「主観的民族言語活力」はフランス社会における日本語・日本文化のステイタスや日仏バイリンガルであることの評価の影響を受けて発達していると推察された。 |
最終更新日 2008年3月11日