修士論文要旨


氏名

劉 欣雲

修了年度

2007年度(2008年1月提出)

修士論文題目

台湾における日本語学習者の学習動機と学習困難度について

要旨

(300字以内)

 本研究では台湾の日本語学習者を対象に学習動機、学習困難度についての質問紙調査を行い、それぞれの尺度を因子分析したところ、学習動機は6因子、学習困難度は6因子が得られた。さらに学年と日本語能力が学習動機及び学習困難度との関連性について分析した結果、学習動機において、学年による差異が有意であったのは『実用志向』、『文化理解』『日本語向上志向』などの因子である。学習困難度において、学年による差異が有意であったのは『台湾人教師との葛藤』、『日本語能力試験』などの因子である。さらに、日本語能力が高いほどの学習者は学習動機も高く、学習困難度も低くなるという結果が明らかになった。また、学習者の抱える学習困難は大学側の学習支援体制と関っているため、大学側で提供できるような制度的支援システムを構築しなければ解決できないことが示唆された。

要旨

(1000字以内)

 海外の日本語学習者は日本語学習に対し、何らかの動機を持っているが、その学習動機は強くても学習意欲は低下してしまうこともよくある。学習支援の立場から学習者がどのような学習動機を持ち、どのような学習困難を抱えているのかを理解する上で、学習者を支援していくべきと思われる。そこで本研究では台湾の大学生を対象に日本語学習動機、学習困難度を探り出し、さらに学年と日本語能力が学習動機及び学習困難度との関連性について明らかにするために4つの課題を設定し、質問紙調査の結果に基づき分析を行った。 研究課題1では『台湾の大学で学ぶ日本語学習者の学習動機』について、因子分析で実用志向、文化理解、大衆文化志向、日本への関与、誘発、日本語向上志向が見出された。研究課題2では『日本語学習においての学習困難度』について、因子分析で台湾人教師との葛藤、上級日本語の表現と運用、学習と試験、日本人教師との葛藤、留学情報の不備、日本語能力試験が見出された。研究課題3では『学習者の属性により、学習動機と学習困難度はそれぞれの差異』について、2年生は3年生より「実用志向」と「日本語向上志向」を高く持ち、1年生は3年生より「文化理解」を高く持つことがみられた。一方、学習困難度では「台湾人教師との葛藤」において、2年生と3年生は1年生より高く困難を感じ、「日本語能力試験」において1年生と2年生は3年生より高く困難を感じることがみられた。また、日本語能力が高い学習者はそれが低い学習者より「実用志向」以外の学習動機因子を高く持つことがみられ、一方、日本語能力が低い学習者はそれが高い学習者よりすべての学習困難度において困難を高く感じることがみられた。研究課題4では『日本語能力は学習動機、学習困難度との関連』について、日本語能力は「実用志向」以外の学習動機と正の相関がみられた。また、日本語能力はすべての学習困難度と負の相関がみられた。 今回の調査では、学習者が明確な目的のある動機付けを持つとしても、やはり学習上の困難さを感じやすいという結果になった。これは自身の日本語力を高めたいと思わない場合は、明確な学習動機を持つとしても学習困難を感じることが明らかになった。また目標に向かって努力する際に、学習者は自身の日本語能力に合わせて困難さを感じ取ることがある。単に学習者の日本語能力を向上させれば、すべての学習困難を解決されるとは限らない。学習者の抱える学習困難は大学側の教育環境と学習支援体制にも関っているため、大学側で提供できるような制度的支援システムを構築しなければ簡単に解決できないと考えられる。

最終更新日 2008年3月11日