修士論文要旨


氏名

陳 明淑

修了年度

2007年度(2008年1月提出)

修士論文題目

日本語学習者の語彙推測
−中国語母語話者の場合−

要旨

(300字以内)

 本研究では文章の中で未知語に出会ったとき学習者は語の構成要素と文脈からの情報を合わせてよりよい語の意味を推測できるか、中国語を母語とする日本語学習者は漢字手がかりに偏りすぎるかを検証することを目的とした。中国語を母語とする初級日本語学習者(中国在住)を対象に実験を実施した。漢字条件と文脈条件を合わせた条件を提示したときの正解率が、漢字のみ条件と文脈のみ条件での正解率より高かった。その結果、中国語を母語とする日本語学習者は文脈からの情報と漢字からの情報を組み合わせることで一種類の手がかりを使うよりより深い理解ができることを検証された。漢字条件と文脈条件を合わせた条件を提示したとき、漢字手がかりを使って選択した確率が文脈手がかりを使う確立より低いことを検証された。

要旨

(1000字以内)

 文章の中で未知語に出会ったとき、学習者はどうするのか?語の構成要素と文脈から語の意味を推測傾向がある。第二言語研究でMori&Nagy(1999)では英語を母語とする日本語学習者は二種類の手がかりを組み合わせると一つの手がかりを使うよりもより深い理解ができるとしている。またMori&Nagy(1999)では漢字から推測する力の高い学生は、文脈から推測する力も高いとはいえないとしている。本研究では中国語を母語とする日本語学習者は文脈からの情報と漢字からの情報を組み合わせることで一種類の手がかりを使うよりより深い理解ができるか。すでに漢字を知っている中国語を母語とする日本語学習者は漢字手がかりに偏りすぎるかを明らかにする。
 本研究は中国の某大学で日本語の初級コースで登録した72人の大学生を研究対象に実験を実施した。目標言語は中国語にはない二文字で構成された一級語彙と級外の日本語語彙を36語選択し、文章は初級レベルに合わせた文章にして与えた。実験テストは:T漢字条件と文脈条件を合わせた条件(k+C)、U漢字のみの条件(K)、V文脈のみの条件(C)の三条件の問題集を提示し、@漢字情報と文脈情報に合った答え(正解タイプ)、A文脈情報ではなく漢字情報のみに合った答え(漢字タイプ)、B漢字情報ではなく文脈情報のみに合った答え(文脈タイプ)、C漢字情報と文脈情報両方ともに合ってない答え(不正解タイプ)四つの答えタイプの中から一つ選択するようにした。
 実験結果はTの条件(K+C)を提示した問題で学習者が@(正解タイプ)を選んだ確立が、Uの条件(K)、Vの条件(C)で@(正解タイプ)を選んだ確立より高かった。この結果から中国語を母語とする日本語学習者は文脈からの情報と漢字からの情報を組み合わせることで一種類の手がかりを使うよりより深い理解ができると検証できた。従って、Mori&Nagy(1999)の研究を支持する結果になった。そして、Tの条件(K+C)でのA(漢字タイプ)を選んだ確立が、Tの条件(K+C)でのB(文脈タイプ)を選んだ確立より低かった。この結果からは中国語を母語とする日本語学習者は漢字手がかりに偏り過ぎないことを検証できた。

最終更新日 2008年3月11日