修士論文要旨


氏名

栗原 友美

修了年度

2005年度(2006年1月提出)

修士論文題目

意見文における「引用」の特徴-日本人大学生と中国人日本語学習者を比較して-

要旨

(300字以内)

本研究は、日本人大学生(以下JP)と中国人学習者(以下CN)によって日本語で書かれた意見文を対象に、引用の出所およびその使用の仕方が意見文に何をもたらすのか、両者の特徴を明らかにすることを目的とした。その結果、JPは自分の立つ意見とは相反する「反対意見」を引用として自己の文章に取り込むスタイルが観察された。一方CNは、自分と同じ意見を示す「喫煙に関する調査や新聞など」を自分の主張のサポート材料として引用する傾向が強く、「反対意見」は取り込まずに自己の主張を述べるスタイルだということが明らかになった。このことからJPはCNに比べて自己の主張の仕方が控えめであり、CNは主張が強めであることが示唆された。

要旨

(1000字以内)

本研究は、日本人大学生(以下JP)と中国人学習者(以下CN)によって日本語で書かれた意見文を対象に、引用の出所およびその使用の仕方の違いを明らかにすることを試みた。引用は主張を述べるための重要な論証を支える手段である。意見文において引用を使用することで説得力が増す(上條1992)とも言われている。本研究では他者の意見や情報を書き手が自分の文章の中で用いる言語行為を引用とする。分析の対象としたデータは「たばこについてあなたの意見を書いてください」という指示で書かれた意見文で、日本人大学生(以下JP)43名、中国人学習者(以下CN)43名分である。中国人学習者は母国で日本語を学ぶ大学生で日本語レベルは中上級である。分析方法はデータに表れる引用をすべて取り出し、JPとCNの引用を比較・対照した。研究課題は@JPとCNの引用の出所に違いがみられるか、AJPとCNでは書き手の立場によって使用した引用の出所に違いがみられるか、みられるとすれば意見文にどのような違いをもたらすのか、の2点である。研究課題1では本研究と同じデータを分析した佐々木(2004)の結果を元に詳細に記述したものである。その結果、引用された出所は「喫煙に関する調査の結果や新聞など」「ことわざ」「〜という表現」書き手の立場とは相反する意見である「反対意見」がみられた。JPは、引用に際して出所を明示的に表さずに「〜という表現」を用いること、そして「反対意見」を多く取り込む傾向がみられた。一方、CNはJPに比べて「喫煙に関わる調査の結果や新聞など」の具体的な資料を多く用いることが分かった。研究課題2では研究課題1で明らかになった引用の出所が、書き手が立つ立場の意見との関連でどのように用いられているのかを分析した。その結果、JPはCNと比べて自分の立つ立場の意見とは相反する内容の引用として「ことわざ」と「反対意見」を多く用いていた。一方、CNは自分の立つ立場の意見と同様の内容を示す「喫煙に関わる調査の結果や新聞など」の引用の使用が多くみられた。このことからJPは自分の立つ意見とは相反する「反対意見」を引用として自己の文章に取り込むスタイルが観察された。CNは、自分と同じ意見を示す「喫煙に関する調査や新聞など」の具体的資料を自分の主張のサポート材料として取り込む傾向が強く、「反対意見」の引用もみられるものの自分の意見とは相反する意見は取り込まずに自己の主張を述べるスタイルだということが分かった。

要旨

(2000字以内)

 

修論発表会要旨

 

 


最終更新日 2006年3月20日