修士論文要旨


氏名

金 珍淑

修了年度

2005年度(2006年1月提出)

修士論文題目

朝・中・日3言語併用者のコード・スイッチング−日本在住朝鮮族の言語運用に注目して−

要旨

(300字以内)

本研究では、朝鮮語・中国語・日本語の3言語を自由に操る朝鮮族の自然会話をデータとし、彼らの日常的な会話で起きるコード・スイッチング(以下CS)を抽出し、そのCSを引き起こす要因を量的・質的方法を用いて分析した。先行研究で多く取り上げられてきた「参加者の属性」、「状況」をほとんど同一に設定し、先行研究では注目されてこなかった「言語の特徴」に焦点をあて、「言語上の要因」と、「機能上の要因」を探ることを目的とした。

その結果、「言語上の要因」は、「言語の特徴」によるものと「聞き手の言語能力」によるものが観察され;「機能上の要因」は、「談話調整」、「相互作用」、「アイデンティティ表示」によるものが観察された。ここでもっとも注目を引くのは、「言語の特徴」によるCSの中の一方向進行のCSである。朝鮮語から日本語への一方向的なCSは主に、「意味領域の違い」、「気持ち・感情の表現」、「受身表現」、「曖昧な表現」、「決まり文句」、「オノマトペ」などの日本語の文化的に特有な表現を使う際起きている。また、朝鮮語から中国語への一方向的なCSは主に、「表現の簡潔さ」、「敬語使用回避」、「論議の便宜さ」などの言語的特徴を利用することに現れている。このような要因は、話し手の各文化、各言語の固有的慣習への好みが大きく作用していると考えられる。総合考察では、ジェガラッツ&C.ペニントン(2000)のコミュニケーションにおける語用論的観点からの理論を用いて、どうしてこのような好みが形成され、どうしてCSの形でコミュニケーションに反映しているのかについて考察を試みる。

要旨

(1000字以内)

近年、社会言語学の展開にともない、コード・スイッチング(以下CS)に関する研究は、CSを引き起こす要因、CSが起きる際の統語上の規則、CSが果たす機能などに注目して多くなされてきた。その中で、CSが起きる際の統語上の規則と、CSが果たす機能に関しては、自然会話を分析データとし、ミクロ的な観点から研究されてきた。しかし、CSを引き起こす要因に関する研究は、「参加者の属性」、「状況」、「話題」など、言語選択に影響する要因と一括扱いするマクロ的な観点からの研究が主である。また研究方法は主にインタビュー調査と質問紙調査の形式であり、実際の会話をデータとした研究は少ない。

 本研究では、朝鮮語・中国語・日本語の3言語を自由に操る朝鮮族の自然会話をデータとし、彼らの日常的な会話で起きるCSを抽出し、そのCSを引き起こす要因を量的・質的方法を用いて分析する。先行研究で多く取り上げられてきた「参加者の属性」、「状況」をほとんど同一に設定し、先行研究では注目されてこなかった「言語の特徴」に焦点をあて、「言語上の要因」と、「機能上の要因」を探ることを目的とした。

その結果、「言語上の要因」は、「言語の特徴」によるものと「聞き手の言語能力」によるものが観察され;「機能上の要因」は、「談話調整」、「相互作用」、「アイデンティティ表示」などによるものが観察された。ここでもっとも注目を引くのは、「言語の特徴」によるCSの中の一方向進行のCSである。朝鮮語から日本語への一方向的なCSは主に、「意味領域の違い」、「気持ち・感情の表現」、「受身表現」、「曖昧な表現」、「決まり文句」、「オノマトペ」などの日本語の文化的に特有な表現を使う際起きている。また、朝鮮語から中国語への一方向的なCSは主に、「表現の簡潔さ」、「敬語使用回避」、「論議の便宜さ」などの言語的特徴を利用することに現れている。このような要因は、話し手の各文化、各言語の固有的慣習への好みが大きく作用していると考えられる。総合考察では、ジェガラッツ&C.ペニントン(2000)のコミュニケーションにおける語用論的観点からの理論を用いて、どうしてこのような好みが形成され、どうしてCSの形でコミュニケーションに反映しているのかについて考察を試みる。

本研究の結果及び考察から、バイリンガルに見られるCSが、自らの持つ言語的資源を必要に応じて巧みに活用するコミュニケーション能力の発動されたものであることが示唆されると考える。

要旨

(2000字以内)

 

修論発表会要旨

 

 


最終更新日 2006年3月20日