修士論文要旨


氏名

金井 淑子

修了年度

2005年度(2006年1月提出)

修士論文題目

地域日本語支援における日本語非母語話者ボランティアの役割

要旨

(300字以内)

日本語教室の学習者(S)、日本語母語話者ボランティア(NSボ)、日本語非母語話者ボランティア(NNSボ)の授業場面でのNNSボの役割を探る。3者間の発話を、量的と質的の両観点から分析した。その結果、授業は主としてNSボとSの間で日本語で行われており、NNSボは母語でSの理解を促すサポートをしていた。NNSボの役割は通訳的なものに限らず、Sの生活上の悩みを引き出して助言をしたり、自己の学習体験を語ることでSの学習方法を方向づけたりしていた。NNSボはSの主体的な授業参加をサポートとするとともに、Sの自己表現を実現していた。

要旨

(1000字以内)

本研究は、地域日本語支援における日本語非母語話者ボランティア(NNSボ)の役割を明らかにすることを目的とする。地域日本語教室における日本語母語話者ボランティア(NSボ)とNNSボと学習者(S) の組み合わせによる授業場面を対象に、NNSボはどのような支援を行なっているかを、発話の方向性・回数・使用言語・発話機能の側面から、質的・量的に分析した。Sの日本語レベルは初級であった。研究課題は@S・NSボ・NNSボの発話はそれぞれ誰に向かってなされているか、AS・NSボ・NNSボの発話はそれぞれどのような機能を果たしているか、の2点である。

研究課題1を分析した結果、授業は主としてSとNSボの間で、日本語で行なわれていたものの、SとNNSボの母語によるやりとり、NSボとNNSボの日本語によるやりとりも観察された。SとNSボ、SとNNSボの間は双方向的なやりとりであり、NSボとNNSボの間では一方向的なやりとりであった。

研究課題2を分析した結果、SとNSボのやりとりは双方向ながらも、NSボがテキストの説明やテキストの中の問いを聞き、Sがそれに返答するものが多く、発話機能は限定的なものであった。他方、SとNNSボのやりとりでは、様々な発話機能が観察された。NNSボが、Sの理解確認や説明要求に応答するものが大部分であったが、特徴的だったのは、NNSボがSの生活上の悩みを引き出して助言をしたり、NNSボ自身の学習経験を語ることでSの学習方法を方向づけたりするものも見受けられた点である。また、SとNSボの間では、Sの受身的な参加が目立ったが、SとNNSボの間では、Sが母語で積極的に質問をしたりするなど主体的参加が見られた。

以上のことから、NNSボの役割は通訳的なものに限らず、Sの主体的な授業参加をサポートするとともに、Sの生活経験を引き出したり、日本語だけでは限定的なものになるSの自己表現を実現していたと言えよう。本研究の結果から、地域日本語教室でのNNSボの役割の可能性を提示したと考える。

要旨

(2000字以内)

 

修論発表会要旨

 

 


最終更新日 2006年3月20日