修士論文要旨


氏名

猪狩 英美

修了年度

2005年度(2006年1月提出)

修士論文題目

ロシア極東地域における日本語学習者の学習動機と学習困難度、学習支援要求度の関連

要旨

(300字以内)

本研究では海外における日本語教師の役割を考えるために、ロシア極東地域の大学の日本語学習者を対象に学習動機、学習困難度、学習支援要求度についての質問紙調査を行い、それぞれの尺度を因子分析したところ、学習動機は8因子、学習困難度は6因子、学習支援要求度は4因子が得られた。さらにこの3つの尺度の関連を分析した結果、外発的動機づけを持つ学習者は学習困難を感じやすく、教師に依存的な傾向があることが明らかになった。このことから、教師は動機づけだけに注目するのではなく、学習困難を軽減するような指導を行う必要があり、また学習者の情意面に常に配慮をし、特に外発的動機づけを持つ学習者に対しては積極的に支援していく必要があることが示唆された。

要旨

(1000字以内)

近年、海外の日本語学習者数は増加の一途を辿っており、それに伴い海外に赴任する日本人教師も増えているが、多くの教師が教師の役割について問題を感じている。特に、海外の学習者の学習動機の多様化と、動機づけの希薄化による学習の継続性の弱さについての指摘は多く、それに対して教師はどう対処すべきか、という課題が常に挙げられる。しかし、これまでは学習動機はその成果との関連で論じられることが多く、また学習継続性を弱めている要因の一つと考えられる学習上の困難点や困難を感じている学習者が具体的に教師にどのような支援を求めているかという視点からの研究はあまりなされていない。

そこで本研究では、ロシア極東地域のハバロフスクにおける日本語学習者を取り巻く環境を、学習動機と学習者が感じている学習困難という側面から捉え、教師に具体的にどのような支援を期待しているかを把握し、教授活動における教師の役割について明らかにするために次の4つの課題を設定した。1.ハバロフスクの大学の日本語学習者はどのような動機づけを持っているか。(学習動機)、2.学習者は日本語学習においてどのような困難を感じているか。(学習困難度)、3.学習者は教師にどのような支援を期待しているか。(学習支援要求度)、4.学習動機、学習困難度、および学習支援要求度にはどのような関連があるか。

質問紙調査の結果、学習動機として『文化的興味』『他者評価』『交流志向』『日本語・日本語学習への興味』『日本への憧れ』『進路・仕事』『専門性獲得』『親族による誘発』の8因子、学習困難度として『上達への困難さ』『上級日本語表現運用力』『教育環境・学習方法』『漢字学習』『試験不安』『日本語との接触機会』の6因子、学習支援要求度として『心理的配慮』『厳しい指導要求』『自律的学習支援』『具体的学習指導』の4因子が得られた。

さらに上記3つの尺度の関連性を検討した結果、海外における日本語教師の役割として、@授業において『日本語・日本語学習への興味』を持たせること、1.学習者の動機づけだけではなく、学習者が遭遇する学習困難に留意し、困難を軽減することで、学習継続性が高まるように指導すること、2.外発的動機づけを持つ学生は教師に依存的な傾向があり、学習困難を強く感じやすいため、より丁寧な指導を行い、常に学習者の情意面に対して配慮することが重要であると示唆された。

要旨

(2000字以内)

 

修論発表会要旨

 

 


最終更新日 2006年3月20日